別居中の妻が職場に来て「犬を返せ!」と迫ったという相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談によると、別居の際、一度は妻がペットの犬を連れ出したものの、環境の変化を心配した夫が連れ戻したといいます。
これまで散歩や世話を主にしていたのは夫で、犬は妻よりも夫になついているそうです。
SNS上でも、別居や離婚の際に「ペットをどちらが引き取るのか」をめぐるトラブルは少なくありません。
夫婦が別居・離婚する場合、どちらがペットの権利を主張できることになるのでしょうか。
ペットをめぐる紛争にくわしい渋谷寛弁護士に聞きました。
●ペットに「親権」はない…法律上は“モノ”として扱われる
──夫婦が飼い始めたペットはどちらが権利を主張できるのでしょうか。
まず前提として、法律上、ペットは「物」として扱われ、所有権の対象となります。人間の子どものような「親権」の制度はありません。
たとえば、夫婦のどちらかが個人的な興味で、自分の財産から費用を出して、自分名義でペットを購入して飼い始め、その後もすべて世話をしているような場合には、その人の単独所有と認められることになると考えられます。
一方で、夫婦で話し合って飼い始めた場合は事情が異なります。
仮に夫婦の一方の名義で契約書を交わし、その人が購入費用を支払ったとしても、夫婦共通の財産から支出されていれば、どちらの財産に属するか明確でないことがあります。この場合、民法762条により、夫婦の共有財産であると推定されます。
共有財産とされる場合、持分は原則として2分の1ずつとなります(民法250条)。つまり、婚姻後に夫婦で飼い始めたペットは、夫婦の共有財産と扱われることになります。
●別居しただけなら所有権は変わらない
──その後、別居した場合はどうなりますか。
別居したという事実だけで、所有権の関係が変わることはありません。
たとえば、夫婦の一方が相手に共有持分を贈与した場合は、もう一方の単独所有に変わりますが、そのような事情がない限り、別居中であってもペットは夫婦の共有財産のままです。

