
突然の豪雨に見舞われ、軒下でひとり雨宿りをしていたはずが、気づけば隣には見知らぬ女性が立っている。しかも、その女性はどこか薄気味悪い。逃げたくても逃げられない雨音の密室で、ふいに「ねえ」と声をかけられ、「濡れずに行く方法を一緒に試してみないか」と誘われたら――。そんな日常のすぐ隣にある不穏さを描いたホラー漫画『ゲリラ豪雨』を紹介する。本作を手がけたのは、電子雑誌「comicタント」(ぶんか社)で都市伝説漫画『ただのうわさです』(原案:飯倉義之)を連載した三ノ輪ブン子さん(@minowabunko)だ。作品に込めた怖さの正体について話を聞いた。
■雨音が世界を切り離す、不気味な“2人きり”の時間



本作の舞台は、ゲリラ豪雨に見舞われた街角。主人公は、軒下でひとり雨宿りをしていたはずだった。ところが、いつのまにか隣には見知らぬ着物姿の女性が立っている。明らかに気になる存在なのに、何かされたわけではない。だからこそ、むやみに逃げるのもためらわれる。しかも外は激しい雨で、簡単には動けない状況だ。
生活音は豪雨にかき消され、外にいるのにその場だけが切り取られたような閉塞感に包まれていく。そして女性は、静かに「ねえ」と声をかけてくる。「濡れずに行く方法を一緒に試してみないか」――その誘いが、ただの親切に見えないところが、この作品の怖さである。
■“目を合わせたくない怖さ”を描きたかった
三ノ輪さんは、昔から夏のにわか雨が好きだという。「一瞬でがらりと周りをとりまく空気も景色も変わって、異世界に迷い込んだ感じに怖くなりつつもワクワクします」と語る。その独特の高揚感と不安感が、本作の空気感にもつながっているようだ。
自身は「知らない人と2人きりで雨宿りをした経験はない」としつつも、ゲリラ豪雨のように逃げ場のない状況そのものに強い恐怖を感じるという。「隣にいる人が何か怪しい動きをしている…でも目が合うのも怖いから何をしているのかはっきり確認できない」。この“確認できないまま不安だけが膨らんでいく感覚”は、電車などの人混みでも起こりうるものだと話す。
■少女漫画になりそうな設定なのに、なぜか怖くなる
“知らない人と2人で雨宿り”という設定は、一歩間違えれば恋の始まりにも見える。しかし、三ノ輪さんの手にかかると、やはりそこから始まるのはホラーだった。
「恋が始まるパターンもあることにいま気づきました!」と笑いつつ、「そちらのパターンも考えてみたのですが、その後、相手の素性がわかるにつれてホラー展開になっていき…」と振り返る。結局、考えれば考えるほど怖い方向へ転がっていってしまったようだ。
■都市伝説を“今の怖さ”として描く作家性
現在連載中の『ただのうわさです』では、「死体洗いのバイト」「メリーさんの電話」「タクシーの幽霊」など、昔からある都市伝説を現代版として描いているという。短編読み切り形式でさまざまな話が登場し、単行本第1巻も発売中。日常にすっと入り込んでくる違和感や、「もしかしたら本当にあるかもしれない」と思わせる距離感は、『ゲリラ豪雨』にも共通している。
■“日常に入ってこられる怖さ”が読者の背筋を冷やす
読者からは「これはマジでゾッとする」「怖ええええええ」といった反応が寄せられ、「ふっと日常に入ってこられる恐怖がある」「この手の幽霊嫌い」といった声も上がったという。派手な怪異ではなく、日常のすぐ隣にある“変な人かもしれない”“でも確信が持てない”という不安が、この作品のじわじわくる怖さを生んでいるのだろう。
ゲリラ豪雨が増える季節、もしどこかで見知らぬ誰かと2人きりで雨宿りをすることがあったなら、この話を思い出してしまうかもしれない。そう思った時点で、もう少しだけ背筋が寒くなる。
取材協力:三ノ輪ブン子(@minowabunko)
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