待ち合わせ場所に現れた達也を、真奈美と優香がはさみうちにする。絶望に染まる夫を前に、優香は集めた証拠と彼自身の「浮気の定義」を突きつける…。
夫が意気揚々と登場
待ち合わせ場所のカフェテラス。 真奈美は「ミキ」として、指定されたテーブルで待っています。
少しはなれた柱のかげから、私はその様子をうかがっていました。
「あ、来たわ」
現れたのは、よそゆきのジャケットを着て、鼻歌でも歌い出しそうなほど上きげんな達也でした。
彼はキョロキョロと周りを見わたし、真奈美の背中に向かって声をかけます。
「あの……ミキさんですか?タツです」
真奈美がゆっくりとふり返りました。
その瞬間、達也の顔から血の気が引いていくのが遠目からでも分かりました。
「え……えっ?……ま、真奈美さん……?」
達也の声がふるえています。
彼は、真奈美が私の親友であることを知っています。結婚式にも来てくれたのですから。
マッチング相手の正体に気が付いた夫
「あら、達也さん!どうしたの?今日は"休日出勤"なんだって?」
真奈美が冷ややかな笑みをうかべて問い詰めます。
「い、いや、これは、その……仕事のうち合わせで……」
「仕事のうち合わせを、マッチングアプリでマッチした"ミキさん"とするの?すごい会社だねー」
達也は金魚のように口をパクパクさせて、かたまっています。
「え、ちょ…ミキさんて…え、まさか…」
そこへ、私はゆっくりと背後から近づきました。
「お仕事、おつかれさま。達〜也〜さ〜ん」
私が声をかけると、達也は「ひっ!」と短い悲鳴を上げてふり返りました。
目を見開き、アゴが外れんばかりにおどろき、絶望に染まったその表情を、私は一生忘れないでしょう。

