銀行で出世する人、しない人
採用の話をしたので、入行してからどうなるのかということにも触れていきましょう。気になるのはやはり、銀行という組織でどんな人が出世するのか、ではないでしょうか。
と、その前に特別待遇で入行する人がいるのかどうか、という話をしたいと思います。
どうやら、実際にいるようです。銀行には、政治家の子供はもちろんのこと、上場企業の社長・役員や大物官僚の子供などがゴロゴロいます。
銀行としては、上場企業社長の子供を入行させることによって、恩を売ることができます。それはいずれ銀行にとってビジネスにつながりますから、悪い話ではありません。もちろん、こうしたエスタブリッシュメントの子息のなかにも、きちんとした選抜を経た優秀な人もたくさんいますが……。
余談ですが、議員の子供が入行するケースですが、たいていは定年まで勤めることはなく、入行して10年もすると辞めて、議員の道へと進んだりします。岸田文雄元総理も石破茂前総理も銀行員でした。
では、メガバンクで出世するのはどういう人なのでしょうか。
おそらくどのメガバンクも同じだと思うのですが、卒業する大学によって最初の篩にかけられています。
昔の三菱銀行は、東京大学卒以外は頭取になれないなどと、まことしやかに言われた時期もありましたが、銀行には今でも多かれ少なかれ学歴重視の面があります。
事実、メガバンクグループの社長・頭取の出身大学は、東京大学、京都大学、一橋大学等の難関国立大学と、私大の雄である早稲田大学、慶應義塾大学に偏重しています。もっとも、これらの大学からの採用人数そのものが多いのも事実ではありますが……。
銀行で出世するのは「従順で空気を読む人」
それでは、銀行の人事評価はどうなっているのでしょうか。
評価は、「業績評価」と「人物評価」の2種類があって、前者は簡単に言うと仕事ができるかどうかです。後者は勤務態度や本人の性格など、銀行員としての人格が問われる評価です。
加えて同僚や部下などが多面的な評価を行う「360度評価」も昨今増加しています。
人物評価で悪い点をつけられないようにするために、絶対にやってはいけないことがあります。それは、上司のメンツを潰すことです。
たとえば会議に出席して、上司や先輩が間違いを言った時に、どうしてもひとこと言わなければ気が済まない人がいます。「それ、間違っていますよ」と言ってしまうタイプです。そういう人は、銀行では確実に出世できません。
一方で、間違っているとわかっていても、会議の場では一切指摘しない人もいます。そして会議が終わった後、その上司や先輩のところに行って「実はかくかくしかじかで……」と言うのです。こういう人は出世の階段をのぼっていきます。

日本の銀行はゼネラリスト志向なので、何か特定の分野に秀でていることよりも、たとえばコミュニケーション能力が高いとか、上下関係を重んじるといった、組織人としての常識を弁えた人が出世します。
一方、実力がめちゃくちゃあって、上司や先輩にも忖度することなく、どんどん自分の言いたいことを言える人材は、銀行で出世できるのでしょうか。
少なくとも、私がこれまで見聞きしてきたなかで、この手のタイプで偉くなった人は一人もいません。これからはひょっとすると、そういう人材が重用される時代が来る可能性もありそうですが、今のところ、おそらくこの手の人材が銀行の頭取やホールディングスの社長になることはないでしょう。
それよりも、この手のタイプの人材は遅かれ早かれ銀行を辞めて、自分のやりたいことをやっていくと思います。
たとえば日本興業銀行を辞めて、楽天グループを創業した三木谷浩史氏や、野村證券を辞めて、ソフトバンクの孫正義氏と一緒にソフトバンクインベストメント(現SBIホールディングス)を立ち上げた北尾吉孝氏も同じタイプだと思います。
要は、いわゆる規格外の人間には出世しにくい人事考課になっているのです。

