深刻な人手不足が続く中、介護事業者にとってはICT活用による業務の効率化が必須です。
実際の導入状況はどうなっているのでしょうか。
受発注や請求などの企業間取引に関するクラウドサービスを提供する会社が、従業員100名以上の医療・介護機関のバックオフィス部門に勤務する人を対象に業務デジタル化に関する実態調査を行いました。
今回はその結果を紹介します。
調査は昨年12月にインターネットを通じて実施。248名が回答しています。
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まず、納品書・請求書・発注書・見積書・契約書の5つの帳票について、どの程度デジタル化が進んでいるかを尋ねました。
帳票により回答結果に多少数字のばらつきがありますので、ここでは5つの帳票の平均値を紹介します。
「デジタル化が完了(すべてシステム・クラウド間で連携しており、紙はゼロ)」という回答は14.4%でした。
「大部分をデジタル化(一部紙やPDFが残る)」は25.1%、「一部をデジタル化(紙が主だが、一部PDFなどでデータ化)」は15.7%でした。
つまり、合計55.2%が程度の差はあれデジタル化しています。
未着手は44.8%ですが、13.0%は「デジタル化を検討・計画中」としていますので、残りの31.8%が「デジタル化を検討しておらず、必要性も感じていない」ということになります。
ロボットやAIの導入ならばともかく、書類デジタル化に関する取り組みでこの数字というのは、正直言って私も驚きました

この理由はどこにあるのでしょうか。
介護事業所でICT化が進まない理由としては「機器やシステムのコスト」「スタッフの苦手意識・拒否反応」がよく挙がります。確かにそれもあるでしょう。
しかし、今回の調査からは、それ以外の原因も見えてきます。
質問の1つに「1ヶ月の間に、取引先とやり取りする帳票の目安」があります。
これに対して43.4%(5つの帳票の平均)が「わからない」と回答しています。
つまり、現場の担当者の2人に1人が、自分の仕事量を正しく把握していないのです。
ICT機器の導入には高度な経営判断が求められます。
例えば、あるシステムを活用するのに毎月20万円のコストがかかるとします。
しかし、それにより正社員1人分の業務を削減できれば「正社員を1人雇用するよりも、経営面では得」ということになります。
つまり、ICTを導入するには
①各社員がどの程度の量・質の業務をこなしているのかを正確に把握する
②導入を検討するシステムや機器で削減できる業務量を把握する
③導入・運用コストと人件費を比較する
という3つのステップを踏まなくてはいけません。
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しかし、介護・医療事業所では①の段階にすら至っていないケースが半分近くに達しています。
これではICT機器の導入は難しいですし、仮に導入しても経費の削減効果が得られないことも考えられます。
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また、今回の調査ではもう一つ興味深い結果がありました。
「請求書と発注書の業務デジタル化について、取引先にどの程度要望しているか」という質問に対し「強く要望している」「要望しているが、強くは伝えていない」は合計47.3%でした。
しかし19.6%が「要望したいが伝えられていない」と回答しています。
つまり「取引先がデジタル化していないために、自身も完全デジタルに移行できない」というケースが少なからずあり、取引先との力関係等でその解決が難しいということに悩んでいるという現実があるのです。
特に、介護業界には今でも「医療が上で、介護は下」という好ましくない意識が残っており、医師や病院には何も意見を言えないという雰囲気があります。
介護業界のICT化を進めていくには、介護事業者への啓発も重要ですが、取引先など周辺事業者の意識を変えることも重要と言えるのではないでしょうか。
介護の三ツ星コンシェルジュ


