無重力の宇宙で、ラーメンは食べられるのか。お風呂やトイレはどうするのか。狭い空間で、どうやって心と人間関係を保つのか――。夢とロマンに満ちた宇宙での暮らしには、地上とはまったく異なる現実があります。
そんな〝宇宙生活のリアル〟を教えてくれるのが、3度の宇宙飛行を経験し、ギネス記録も持つ宇宙飛行士・野口聡一さんの著書『宇宙でラーメンは食べられるか 宇宙暮らしのロマンと現実』です。宇宙で実際に暮らしてみて初めてわかる驚きや工夫、そして人間らしい悩みや楽しみについて、本書から一部をご紹介します。
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宇宙食はレパートリーが豊富!
旅の楽しみの一つは食事です。旅行前にガイドブックやインターネットで情報を集め、何を食べようか、どの店にしようかと入念な計画を立てるという人もいるのではないでしょうか。
あいにく宇宙には飲食店はなく、いまのところ宇宙での食事といえば「宇宙食」です。
宇宙食は、ISSなどの無重力環境で安全かつ快適に食べられて、宇宙飛行士がミッションをこなすのに必要十分な栄養をとれるよう設計された食事です。

「宇宙食=おいしくなさそう」というイメージがあるかもしれませんが、近年の宇宙食の進化には目を見張るものがあります。
1960年代初頭の宇宙食は、固形食やチューブ入りの離乳食のようなものがメインで、お世辞にもおいしいとはいえなかったようです。けれど、「宇宙でもおいしいものを食べたい」という宇宙飛行士の悲願と、「栄養バランスおよびメンタルヘルスを維持するためには食事も重要だ」という認識を追い風に、味の向上が図られレパートリーも増えていきました。宇宙食の現在のレパートリーはなんと300種類! とても充実しているのです。
宇宙食はどう作られ、どう届くのか
宇宙食は、加水食品、温度安定化食品、自然形態食品・半乾燥食品、生鮮食品、放射線照射食品の5タイプに分けられます。
加水食品は水やお湯を加えて食べるタイプです。ごはん類や麵類などのフリーズドライ製法でつくられた食品や、飲料などがあります。

温度安定化食品は、レトルト食品や缶詰のこと。開封してそのまま食べるか、フードウォーマーで温めて食べます。フードウォーマーは電波を発しない調理設備です。
自然形態食品・半乾燥食品は、そのまま食べられるタイプ。お菓子類やのり、ドライフルーツ、ビーフジャーキーなどがあります。
ISSにおける生鮮食品は、1~3か月に1回のペースで、補給船によってISSに届けられる食品を指します。りんごやオレンジなどの果物、レタス、きゅうりなどの生野菜、チーズなどが含まれます。賞味期限が短いため、到着後すぐに中身をチェックし、優先的に食べていきます。
放射線照射食品は、放射線によって殺菌した食品です。病原菌がほぼいない状態になるため、食中毒のリスクが極めて少なく、長期保存にも適しています。ビーフステーキや照り焼きチキン、魚料理などがあります。
このほか、マヨネーズ、しょうゆ、塩、こしょう、ケチャップなどの調味料もあります。

