
韓国ドラマ「ムービング」をご存じだろうか。2023年にディズニープラスで配信された本作は、“韓国のゴールデングローブ賞”ともいわれる「第60回百想芸術大賞」TV部門において、最も優れたコンテンツとして大賞を獲得するなど数々の賞を総なめにした名作だ。日本でも配信時に大きな話題を集めた。
しかし、全20話という大ボリュームであり、当時は字幕版しかなかったこともあって、視聴を諦めた人や途中で離脱してしまった“リタイア組”も少なくないようだ。そんな本作に2026年3月、ついに日本語吹替版が実装された。これを機に、改めて本作の魅力をひもといていく。(以下、ネタバレを含みます)
■全20話で親子2世代の“愛と絆”を描く壮大な物語
「ムービング」は、親と子2世代にわたる超能力者たちの過酷な戦いと、その奥底にある愛と絆を描いた全20話の大作ドラマだ。“韓国ウェブトゥーン界の父”とも呼ばれる人気作家・カンフルが、累積1.5億ビューを記録した自身の人気漫画を自ら脚本化して映像の世界へと昇華させた。
1990年代、韓国の国家安全企画部には超能力者たちによる秘密のエリート部隊があった。超能力を使って国を守っていた彼らはある日突然解散し、メンバーは散り散りに。それから数十年がたった現代、超能力者たちを狙った事件が発生する。
同じころ元メンバーの子どもたちが、親から受け継いだ互いの超能力を知らないまま偶然クラスメートとして出会う――というストーリーが描かれる。
本作の構成は非常に巧みだ。序盤は現代を舞台にした“子世代”の青春物語が描かれ、中盤で時代が大きく遡り、親たちが若かった頃の“親世代”の激動の時代へとシフトする。そして終盤では再び現代へと戻り、親世代と子世代が入り混じって共通の脅威に立ち向かうという壮大なスケールで描かれる。
全20話をかけて主要人物たちの背景や人生を丁寧に描き出すため、物語が佳境に入る頃には、視聴者は全ての登場人物に深く感情移入してしまうのだ。また、子世代のエピソードで散りばめられた数々の謎や伏線が、親世代の過去編で見事に回収されていくカタルシスもたまらない。
キャスト陣の豪華さも特筆すべき点だ。親世代には「その冬、風が吹く」のチョ・インソン、「トンイ」のハン・ヒョジュ、「エクストリーム・ジョブ」のリュ・スンリョンといった韓国エンタメ界を牽引する実力派俳優陣が集結。
一方の子世代にも、「わかっていても」のイ・ジョンハ、「還魂2」のコ・ユンジョンら、今をときめく若手注目キャストが顔を揃えている。長編ドラマの中で、この実力派キャストたちがエピソードごとに主人公となり、感情豊かなドラマを紡ぎ出している。
■まるで別作品! キャラクターごとに展開する濃密な人間ドラマ
本作は2〜3話単位でメインとなるキャラクターが入れ替わる群像劇のスタイルをとり、主人公や時代が変わるたびに、まるで別のジャンルの作品を見ているかのような驚きと新鮮さを味わうことができる。
劇中で描かれるのは、男女の切ないロマンス、無償の親子愛、熱い友情など、さまざまな形の“愛”だ。そして、その愛のために命を懸けて戦う人々の姿が、最終話に向けて一つに収束していく見事な展開を見せる。
たとえば、序盤の主人公となる“空を飛ぶ力”を持つ心優しい男子高校生ボンソクと、彼を守り抜くためならどんな困難にも立ち向かう母ミヒョンが織りなす親子の絆は、本作の大きな見どころだ。また、ボンソクと淡い恋模様を繰り広げる“再生能力”を宿す美少女転校生ヒスと、その父ジュウォンの関係性も見る者の心を揺さぶる。
こうした子世代のドラマの背景には、若き日の“親世代”が経験した濃密なロマンスと過酷な運命が存在している。親から子へと受け継がれる2世代の物語をあわせて体験することで、作品への没入感はより一層深まっていくのだ。
こういった展開や伏線が登場人物の多くに用意されており、豪華な俳優を多数キャスティングした理由が、すべてのキャラクターを通して“人間”を深く描くためだったのだと納得させられる。
■吹替版の登場で再注目
第一印象では“超能力アクション”という側面が目立つ本作。しかし実際は、超能力者であるがゆえに過酷な試練に直面し、愛する家族や恋人、友人を守るために命を懸けた先に生まれる普遍的な愛のドラマこそが「ムービング」の真骨頂。
2023年の配信当時から高く評価されていた本作だが、全20話というボリュームや字幕版のみという視聴環境が壁となり、その巧妙な伏線や濃密なドラマを堪能する前にリタイアしてしまった視聴者もいたようだ。SNS上では「なんでムービングに吹替がないんだ」「字幕しかないのがつらい」といった声も散見されていた。
それだけに、今回の日本語吹替版の配信開始は話題を呼んでいる。ネット上では本作のファンからの「吹替版きた!!」という喜びの声や、「気になっていたけど吹替が追加されたから見よう」といった未視聴勢の声が上がっており、作品への注目度が再び高まっている。
すでにシーズン2の制作も発表され、ますます広がりを見せる「ムービング」の世界。吹替版の登場で、新たにハマる視聴者も多いのではないだろうか。
「ムービング」はディズニープラスのスターにて全話独占配信中。

