
「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」(2018年)や「D.P.-脱走兵追跡官-」(2021年)シリーズなどで知られる韓国の人気俳優チョン・ヘインが、4月1日に38歳の誕生日を迎えた。26歳と遅めのデビューながら“国民の年下男子”として瞬く間にトップスターに駆け上がったヘインの活躍ぶりを、このタイミングで振り返る。
■26歳、遅めのデビュー
1988年4月1日、李氏朝鮮時代の儒学者・チョン・ヤギョンの子孫にあたる由緒ある家系に生まれたヘイン。高校生までは俳優を夢見たことがなく、大学修学能力試験(日本の大学入学共通テストのようなもの)を受けた直後にスカウトされ、演技の仕事を意識するようになった。
大学を卒業し、兵役も終えて社会に出てから俳優になるべくオーディションに挑戦したが、道がすんなり開けたわけではなかった。トークバラエティー「ユ・クイズ ON THE BLOCK」では、当時のオーディションでの思い出として「緊張してうまく演技できなくて部屋を出たけど、終わった後も心残りがあって最後にもう一度オーディションの部屋に戻り『もう一回やらせてください』とお願いしたんです。結局落ちましたが…。その時、これからは演技する時に後悔しないよう、準備もしっかりして臨もうという考えが生まれました」と振り返っている。
26歳も間近の2014年2月、「百年の花嫁」でドラマデビュー。そこから12年、以降はコンスタントに毎年ドラマや映画に出演している。
■初恋キャラから“国民の年下男子”、そして“モンスター”へ
爽やかなルックスからか、デビュー当初はヒロインの初恋相手やヒロインに片思いするキャラクターの役が多かった。日本でも人気の2作品、「恋のスケッチ~応答せよ1988~」(2015-2016年)ではヒロインに片思いする役、「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」(2016年)では、ヒロインの初恋の相手として登場する。
特に「トッケビ」では登場シーンが複数あり、主人公のキム・シン(コン・ユ)が嫉妬するエピソードも描かれることから「あのかわいい男の子は誰!?」と注目を集め、知名度を高めるきっかけとなった。
そんなヘインは「トッケビ」出演から2年後、運命的な作品と巡り合う。それが「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」。ソン・イェジン演じる35歳の主人公・ジナと、彼女が弟のようにかわいがる年下の友人ジュニとの間に芽生えるロマンスを描いた作品で、ヘインはジナにご飯をおごってもらう年下男子ジュニを演じた。
この作品が、世界的ヒットを記録した。ヘインは役柄のイメージから“国民の年下男子”と呼ばれ、大ブレーク。当時韓国では“チョン・ヘイン症候群”という言葉が生まれるほどの注目を集めたが、ヘイン自身はデビューわずか4年での大ブレークに戸惑いを感じていたという。
前述の「ユ・クイズ」では、「準備がまだできていないのに注目を集めたから負荷が大きくて不眠症になって…。カメラの前に立って評価を受けることも恐ろしい時期がありました。すべての人に愛されることはできないと知ってからは、自分のことを応援してくれる人のために全力を尽くそうという気持ちに変わりました」と振り返っている。
こうして、Instagramのフォロワー数が約1470万人(2026年3月現在)を誇るスターとなったチョン・ヘイン。現在も、38歳とは思えない童顔&美肌ぶりを誇る。「よくおごってくれる―」の時すでに30歳だったが、この奇跡の童顔ルックスがその人気に貢献しているのは間違いない。
彼がニューヨークを訪れるドキュメンタリー「チョン・ヘインのI ● NEW YORK」※「●」はハートマーク(2019年)でも、グランドセントラル駅の中にあるオイスターバーでビールを注文した際に、店員から「21歳以上か?」と年齢確認され、「32歳です(撮影当時)」というヘインの答えに店員も「童顔なのね」と驚くエピソードが確認できる。
■“兵士”役で男性ファンを獲得、さらには“モンスター”へ…
その一方で、“国民の年下男子”キャラを払拭するかのように、新たなイメージの役柄にも果敢に挑んでいる。WEBコミックをドラマ化した「D.P.-脱走兵追跡官-」シリーズでは、脱走兵を捕まえる憲兵隊の一員・ジュノ役で主演。ボクシングの特訓を受け、チャーミングな笑顔を封印してクールで任務に忠実なジュノを熱演した。ヘイン自身「この作品で男性のファンの方が増えました」と語っている。
さらにファンの度肝を抜いた作品が、2022年12月にディズニープラス スターで配信されたオリジナルドラマ「コネクト」。ヘインは、“コネクト”と呼ばれる不死身の体を持つ主人公ハ・ドンスを演じた。
帰宅途中、臓器売買集団に拉致され、体を切り裂かれ、両眼もくり抜かれてしまうドンス。“コネクト”ゆえに傷口はみるみる塞がり、左眼も体に戻るのだが、闇医者が仲間を呼んだために、彼は右眼を残したまま逃亡。その右眼が連続殺人鬼に移植されたことを知り、奪われた右眼を取り戻すために殺人鬼を追いつめていく――という、何ともショッキングなストーリーが展開する。
メガホンをとったのは、日本が誇る鬼才・三池崇史監督。通訳はいたものの、三池監督との現場でのやりとりは主に視線とボディーランゲージだったという。ヘインは言葉よりも体からにじみ出る感情を大切にしながら、特異な体質のせいで幼い頃から“化け物”呼ばわりされてきたドンスの苦しみや恨み、孤独、目をくり抜かれたり体を切り裂かれたりする際の苦痛に歪んだ表情など、心身を苛むような生々しい痛みを表現。アクションも高い評価を得た。
■「今日一日一日を大事に」チョン・ヘインが見つめる未来
インタビューでも度々「何周年という数字を殊更に数えることはしない。それよりも今日一日一日を一番大切にしている」「一日一日努力して一生懸命生きていれば良い結果があるだろうし、また誰かはそれを認めてくれるのではないか、それでいい」といった言葉をよく口にしている。
持って生まれた資質とオーラに加え、現場で鍛えた演技力、そして成功するには欠かせない運。そうしたものをすべて兼ね備え、遅いスタートにもかかわらずトップスターへと駆け上がったヘイン。まだまだ38歳、その活躍はまだ始まったばかり。
デビュー10周年の年にJTBCニュースに出演し「10年後、どんな俳優になっていたいか」の質問に「40代半ばの一人の中年を演じる、そんな俳優だと思います。その年代を生きるおじさんを演じることができる、そんな俳優でいられたらいいですね」と語った通り、これからも一歩一歩着実にベテラン俳優への道を歩んでいくに違いない。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

