海外旅行や出張のあと、「夜眠れない」「昼間に強い眠気がある」といった経験はありませんか?それは「時差ボケ(jet lag)」かもしれません。この記事では、時差ボケの原因・症状・治し方、さらにヨーロッパやアメリカから帰国した際の対策、薬の考え方までわかりやすく解説します。

監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
2011年福島県立医科大学医学部卒業。2013年福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長を歴任。2022年より東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医、健康経営エキスパートアドバイザー。
時差ボケとは?

時差ボケとは、体内時計(概日リズム)と現地時間のズレによって起こる一時的な不調のことです。人の体には、睡眠、体温、ホルモン分泌などを約24時間周期で調整する仕組みがあり、その中心は脳の視交叉上核にあります。この体内時計は、主に光によって調整されています。
飛行機で短時間のうちに複数の時間帯をまたぐと、体内時計が新しい昼夜のリズムにすぐには追いつけず、睡眠の乱れやだるさ、集中力低下、胃腸の不調などが出ることがあります。一般に、時差が大きいほど起こりやすく、特に体を早寝早起き方向に動かす必要がある移動の方がつらく感じやすいとされています。これは、人の体内時計が平均すると24時間より少し長めで、遅らせる方が前に進めるより調整しやすいためです西向きの適応は1日あたり約1.5時間、東向きは約1時間が目安といわれています。
また、長距離移動では、時差ボケとは別に、乾燥、脱水、長時間同じ姿勢、機内で眠れないことなどによる移動疲れも起こります。両者は症状が似ていますが、時差ボケの中心は体内時計のズレです。
時差ボケになると現れる症状

時差ボケは、多くの場合は時間の経過とともに自然に改善していきます。無理にすぐ治そうとするより、到着後はできる範囲で予定に余裕を持ち、少しずつ現地時間に体を合わせていくことが大切です。多くの人では、数日から1週間前後でかなり楽になりますが、つらさの出方には個人差があります。
長距離フライト後に出やすい症状には、次のようなものがあります。
睡眠障害(不眠・早朝覚醒)
夜になっても眠れない、寝つきが悪い、途中で何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまう、といった症状です。到着地では夜でも、体内時計は「まだ昼」だと感じているために起こります。時差ボケで最もよくみられる症状の一つです。
日中の強い眠気・集中力低下
昼間に強い眠気が出たり、ぼんやりしたり、注意力や判断力が落ちたりします。仕事のミスが増える、会話が頭に入りにくい、運転が危ないと感じることもあります。現地では昼でも、体内時計は「まだ夜」と感じていることがあるためです。
消化器症状(食欲不振・便秘・下痢)
食欲がわかない、胃がもたれる、便秘や下痢になるなどの症状が出ることがあります。消化管にも体内時計の影響があるため、食事のタイミングが急に変わると胃腸の調子が乱れやすくなります。
気分の変調(イライラ・軽い抑うつ)
イライラしやすい、気分が落ち込みやすい、不安っぽいなど、気分の変化が出ることがあります。睡眠不足と体内時計の乱れが重なると、心の余裕がなくなりやすくなります。
身体的疲労感・倦怠感
全身のだるさ、頭が重い感じ、疲労感などもよくみられます。ここには体内時計のズレに加えて、移動疲れや脱水、機内で眠れなかったことも重なっていることがあります。

