リオグランデ・ド・スル連邦大学の研究チームは、糖尿病患者の身体活動不足が脳卒中や網膜症などの合併症に与える影響を世界規模で推定しました。237万人超のデータを解析した結果、運動不足が合併症発症の大きな要因となっている実態が判明。特に高所得地域や教育水準によるリスクの差も示されています。この衝撃的な研究内容と、日々の診療における運動の重要性について、五藤先生に伺いました。
※2026年3月取材。

監修医師:
五藤 良将(医師)
防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
糖尿病患者の「身体活動不足」が招く代償。合併症のリスクを高める数値とは
編集部
リオグランデ・ド・スル連邦大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
五藤先生
リオグランデ・ド・スル連邦大学の研究員らは、糖尿病患者における身体活動不足が、大血管合併症や網膜症にどの程度関与しているかを、国・地域・世界レベルで推定しました。研究では、糖尿病のある成人を対象に、身体活動不足の有病率と、心血管疾患、脳卒中、冠動脈疾患、心不全、網膜症との関連を調べた集団ベースのコホート研究および横断調査を統合解析しました。
解析対象は成人237万人超にのぼり、複数の地域のデータが含まれています。その結果、身体活動不足が関与する割合は、脳卒中で10.2%、網膜症で9.7%、心不全で7.3%と高く、これらの合併症に与える影響の大きさが示されました。
特に、高所得のアジア太平洋地域やラテンアメリカ・カリブ海地域などで人口寄与割合が高い傾向がみられ、国の所得水準が高いほどその割合も高くなっていました。
また、教育水準の低い成人では、全ての合併症でより高い傾向がみられました。研究チームは、糖尿病患者の身体活動不足を減らすための介入を個別に調整することで、合併症による健康被害の軽減につながる可能性があるとしています。
「自覚症状がない」からこそ恐ろしい。糖尿病が招く失明や人工透析などの重篤な合併症
編集部
今回の研究テーマに関連する糖尿病について教えてください。
五藤先生
糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンが十分に働かないことで、血液中のブドウ糖が増え、血糖値が高くなる病気です。血糖値が高い状態が長く続くと血管が傷つき、将来的に心臓病や失明、腎不全、足の切断などの慢性合併症につながることがあります。また、著しく血糖値が高くなると、昏睡などの急性合併症を起こすこともあります。糖尿病は初期には自覚症状が乏しく、気づかないまま進行することも少なくありません。症状が出る場合には、喉の渇きや水分摂取の増加、尿の回数の増加、体重減少、疲れやすさなどがみられます。さらに重症化すると意識障害に至ることもあります。
症状がなくても健診で見つかる場合があるため、早めに状態を知り、適切な治療や生活管理につなげていきましょう。

