介護の現場では、排泄介助や身体ケアに伴って発生する臭いが、ご家族や介護者の負担感につながることも少なくありません。こうした臭いの問題は、適切な対処法が分からないまま抱え込んでしまい、精神的なストレスになる可能性もあります。
そのため、原因を正しく理解し、それぞれに合った対策を講じることが大切です。
本記事では介護の臭いについて以下の点を中心にご紹介します。
介護の場面で臭いが発生しやすい理由
原因に合わせた介護の臭い対策
介護の臭いと向き合ううえで大切なこと
介護の臭いについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
高山 哲朗(かなまち慈優クリニック)
理事長 高山 哲朗
平成14年慶應義塾大学卒業
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、
平成29年 かなまち慈優クリニック院長
【所属協会・資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長
介護の臭いが発生しやすい原因

介護の場面で臭いが発生しやすいのはなぜですか?
介護の場面で臭いが発生しやすい背景には、生活環境や身体状況の変化が関係しているとされています。主な発生源として挙げられるのが、汗が染み込んだ寝具や衣類、そして使用済みおむつや簡易トイレなど排泄物に由来する臭いです。
これらの臭いの根本的な原因は、いずれも雑菌の繁殖にあります。
皮膚や排泄物に含まれる成分を栄養源として菌が増殖する過程で、臭気物質が発生し、時間の経過とともに臭いが強くなります。
要介護者の場合、入浴や着替えの頻度が限られやすく、さらにベッドの上で過ごす時間も長くなりがちです。その結果、寝具周辺は高温多湿の状態になりやすく、菌が増えやすい環境が整ってしまいます。
また、使用済み紙おむつは適切に処理しても、回収日まで常温で保管されていると、内部で菌が繁殖し、臭いを強める要因となります。
さらに、介護空間の臭いは単一の原因ではなく、複数の要素が重なり合って発生するとされています。尿や便に由来する臭いだけでなく、汗臭や加齢臭、さらには外用薬の影響による臭気などが混在し、介護特有の複合的な臭いにつながります。
介護の臭いをそのままにするとどのような影響がありますか?
介護の場面で発生する臭いに気付いていても、「仕方がないもの」として放置してしまうことも少なくありません。しかし、臭いをそのままにしておくと、寝具や衣類、室内環境にまで染み付き、生活空間の快適性を損なう要因となります。
また、要介護者本人が自身の臭いを気にするあまり、排泄を我慢したり、気持ちを塞ぎ込んでしまったりすることもあり、生活の質の低下につながる可能性があります。
さらに、介護を担う家族にとっても精神的な負担となり、介護疲れの一因になることもあります。
臭いの原因にはどのようなことがありますか?
介護の現場で発生する臭いは、ひとつの原因だけでなく、複数の要素が重なって生じる複合臭とされています。主な発生源は、身体、排泄物、衣類・寝具の3つに分けられます。
1.身体から生じる臭い(口臭・体臭)
高齢になると唾液の分泌量が減少し、口腔内の細菌が増えやすくなるため口臭が強くなる場合があります。加えて、むし歯や歯周病も臭いの原因です。体臭は、加齢に伴う皮脂成分の変化や汗の蓄積が関係しているとされています。入浴や清拭の頻度が限られることで、臭いが残りやすくなる傾向があります。
2.排泄物に由来する臭い(尿臭・便臭)
おむつやポータブルトイレを使用する介護環境では、排泄物の臭いが発生しやすくなります。交換時だけでなく、使用済みおむつの保管や、衣類、寝具への付着も臭いが広がる原因です。
3.衣類・寝具に染み付く臭い
食べこぼしや汗、排泄物の付着などの汚れが衣類やシーツに染み込むことで、洗濯後も臭いが残ることがあります。こまめな交換が難しい在宅介護では、蓄積臭も臭気の一因です。
臭いが強くなりやすい場面やタイミングを教えてください
介護の現場では、排泄直後よりも、時間が経過した後の方が臭いが強まる傾向があります。特に、尿や便が寝具や衣類に付着したまま放置されると、成分が変化してしみつき臭となり、臭気が一層強くなります。
また、シーツやマットレス、床などに飛び散った排泄物をそのままにしている場合も、臭いが広がりやすくなります。
臭気の定着を防ぐためには、排泄後の早めの拭き取りや洗濯、清掃を行うことが重要です。
原因別!介護の臭い対策

排泄に関する臭いはどのように対策すればよいですか?
介護をするうえで、排泄物に由来する臭いは、影響が大きいとされています。そのため、早めの処理と密閉管理が重要です。おむつは使用後すぐに密封性の高い袋へ入れて口をしっかり閉じ、フタ付きのゴミ箱で保管します。消臭剤やスプレーを併用するのもおすすめです。
ポータブルトイレを使用している場合は、排泄後できるだけ早く片付け、定期的に洗浄し乾燥させて臭いの付着を防ぎましょう。
設備面では、水栓式のベッドサイドトイレを導入することで、臭いの軽減や後処理の負担軽減にもつながります。
部屋や寝具にこもる臭いの対処法はありますか?
部屋や寝具にこもる臭いには、換気が基本の対策です。空気が滞ると臭気成分が室内に留まり、カーテンや寝具、家具などに付着して蓄積しやすくなるといわれています。おむつ交換や排泄処理の際は、窓を開けて空気を入れ替えるようにしましょう。
寒い時期は短時間の換気や空気清浄機の併用もおすすめです。
併せて、置き型消臭剤や消臭スプレーを活用することで、室内に広がる臭いの軽減が期待できます。
換気と消臭を組み合わせることがポイントです。
衣類や身体の臭いを防ぐためにできることはありますか?
衣類や寝具は、汗や汚れが染み込む前にこまめな洗濯が基本です。柔軟剤や精油など好みの香りを取り入れることで、清潔さに加えて快適さも期待できます。
体臭対策には入浴や清拭がおすすめです。全身入浴が難しい場合でも、脇や足、排泄まわりなどを拭くだけで臭いの軽減が期待できます。
また、口臭や体臭、排泄臭は食生活の影響を受けることもあるため、栄養バランスを意識しつつ、無理のない範囲で食事の内容を見直すことも予防につながります。

