黄体機能不全とは女性の卵巣に関わる病気の1つです。
何らかの原因で、妊娠維持に重要な役割を果たす黄体から十分なホルモン分泌が行われない状態を指します。
黄体が担うホルモン分泌が正常に行われないと、月経周期の乱れ・不正出血が見られたり、不妊の原因になったりします。
今回は女性の病気である黄体機能不全について、その原因と症状についても解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「黄体機能不全」とは?症状・原因・改善する食べ物も解説!医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
前田 裕斗(医師)
東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。
黄体機能不全の症状と原因

黄体機能不全はどのような状態ですか?
卵巣にある黄体という器官がうまく機能せず、月経周期の異常や不正出血を引き起こす病気です。黄体とは卵巣内で、排卵後の卵胞が変化してできる一時的な内分泌構造です。女性ホルモンであるエストロゲン・プロゲステロンを放出して、子宮内膜を厚くし、発達・保持をする役割を担っています。もし排卵後に妊娠しないと、黄体はホルモンの分泌をストップしてその役割を終え、月経時に消えてしまいます。黄体機能に異常があると女性ホルモンの中でもエストロゲン・プロゲステロンの分泌がうまくいかず、女性の月経・妊娠に影響が及ぶのです。
黄体機能不全の症状を教えてください。
まず挙げられるのが月経周期の短縮化や不正出血です。女性の月経周期は以下の3つに分けられています。
卵胞期:月経が始まってから排卵までの期間
排卵期:成熟した卵胞から卵子が排出される期間
黄体期:排卵後、月経が始まるまでの期間
卵胞期・黄体期はそれぞれ約14日間ありますが、黄体が作られない・機能しないという状態では、この黄体期が短くなります。結果、月経周期が短くなり、また女性ホルモンの乱れから不正出血が生じるのです。また、黄体は妊娠の維持においても大切な役割を果たします。黄体からプロゲステロンが放出されないと、受精しても受精卵がうまく着床しないなどの問題が起こりやすく不妊や習慣性流産の原因となり得ます。
黄体機能不全は何が原因で起こりますか?
黄体の機能が落ちる原因は様々に指摘されており、多様な原因が考えられます。例えば脳機能について、卵巣のホルモン分泌を調整している脳の間脳視床下部、下垂体という部位が正常に働かないことが原因となることがあります。また卵巣自体がうまく機能せず、卵胞が黄体に移行できない場合や、黄体が正常にホルモンを分泌しているのに、子宮がホルモンを正常に受けとれないというケースも報告されています。 ほかに糖尿病などの全身性の疾病、飲酒・喫煙などの嗜好品、精神的ストレスでも黄体機能不全になるケースが報告されており、原因がはっきりわからないこともあります。
不妊の原因になると聞きましたが・・・。
黄体から放出されるプロゲステロン(黄体ホルモン)は、受精卵が子宮内膜へ着床し、妊娠を維持するのに大きな役割を果たしています。黄体機能不全によりプロゲステロンが放出されないと、受精卵の着床失敗や妊娠が維持できず早期流産などを引き起こす可能性があります。
編集部まとめ

黄体機能不全は、黄体ホルモンが機能しない女性特有の病気です。
黄体期に適切なホルモンが放出されないことで、月経周期が極端に短くなったり、不正出血が起こったりします。
また妊娠とその維持に関して重要な役割を持つ黄体ホルモンが正常に機能しないと、妊娠できなかったり、流産を繰り返したりすることもあります。
一方で黄体機能不全は排卵期に黄体ホルモンを投与することで改善する病気です。妊娠を考えている方は、しっかりと基礎体温をつけて黄体期に異常がないかを確認しましょう。
妊娠を考えていない方には、低用量ピルや漢方で治療を行っています。早めに治療を開始することが、病気を改善させるためのポイントです。
参考文献
黄体機能不全|Medical Note
月経不順|一般社団法人日本女性心身医学会

