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なぜ?絵が「額縁」に入っている3つの理由とは

ターナー作『戦艦テメレール号』の額縁部分ターナー作『戦艦テメレール号』の額縁部分, Public domain, via Wikimedia Commons.

単なる装飾品ではなく、作品を保護し、所有を示し、鑑賞体験を形作る装置として、額縁は美術史の中で独自の進化を遂げてきたのです。

額縁が果たす多様な役割

額縁の存在意義を考える上で、その多機能性に注目する必要があります。額縁は主に以下のような役割を担ってきました。

ラファエロ、『アレクサンドリアの聖カタリナ』ラファエロ、『アレクサンドリアの聖カタリナ』、1507年頃, Public domain, via Wikimedia Commons.

まず第一に、保護機能です。
額縁は絵画を物理的な損傷から守り、埃や汚染物質、有害な紫外線から作品を保護します。
特にガラスやアクリル板と組み合わせることで、作品の寿命を大幅に延ばすことができます。持ち運びや展示の際にも、額縁があることで作品を安全に扱うことができるのです。

第二に、視覚的な境界の設定です。
額縁は現実世界と絵画の中の世界を明確に分離します。
古代から続くこの機能は、鑑賞者が作品に没入するための「入口」としての役割を果たします。額縁を選び直すことは、その作品を自分のものにする行為です。例えば作品の購入者にとって、これは所有権としての表現なのです。

第三に、文脈の提供です。
額縁のスタイルや素材は、作品が制作された時代や地域についての情報を伝えます。
例えば、イタリアの額縁にはポプラやウォルナットが、オランダの額縁にはバスウッドやリンデンが使われることが多く、木材の種類だけで額縁の出自を推測することができます。美術館の学芸員にとって、額縁に残された展覧会のラベルや税関の印は、作品の来歴を辿る上で貴重な手がかりとなります。

額縁の誕生

額縁の起源は、古代エジプトやギリシャ、ローマ時代にまで遡ります。
といっても、当時の「額縁」は今日のような独立した物体ではありませんでした。壁画や陶器に描かれた絵の周囲に、装飾的な境界線を描き込むことで、描かれた世界と現実世界を区切る役割を果たしていたのです。
紀元50年から70年頃のエジプトの墓から発見された木製の額縁は、現存する最古級の物理的な額縁として知られています。

一体成型の円形モールディング一体成型の円形モールディング, Public domain, via Wikimedia Commons.

12世紀から13世紀のヨーロッパになると、現代の私たちが知るような手彫りの木製額縁が登場します。ただし、これらは教会建築の一部として作られました。
当時の額縁は絵画と一体化しており、木製パネルの絵を描く部分を彫り込んで、周囲に盛り上がった縁を残すという「一体型」の構造でした。
これは「インテグラル・フレーム(integral frame)」と呼ばれ、芸術家はこの彫り込まれた部分に直接絵を描いていたのです。

中世の教会では、これらの額縁付き祭壇画が壁面に固定され、建築物の一部として機能していました。
金箔や宝石で装飾された豪華な額縁は、天国の栄光を象徴するものとして、信徒たちに宗教的な畏敬の念を抱かせる役割を担っていました。
額縁は単に絵を囲むだけでなく、ゴシック建築の尖塔や柱を模した装飾が施され、教会建築そのものと呼応していたのです。

配信元: イロハニアート

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