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なぜ?絵が「額縁」に入っている3つの理由とは

20世紀の革命

20世紀に入ると、額縁に対する考え方そのものが問い直されることになります。抽象表現主義の画家たちは、額縁という伝統的な枠組みに疑問を投げかけました。

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その代表的な人物がMark Rothko(マーク・ロスコ、1903-1970年)です。ラトビア出身でアメリカに移住したロスコは、大きな色面が重なり合う抽象絵画で知られています。彼は自身の作品を額縁なしで展示することを好みました。ロスコにとって、額縁は鑑賞者と作品の間に不要な境界を作り出すものでした。

彼の《No. 61(Rust and Blue)(61番(錆色と青)》(1953年)のような作品は、色彩そのものが持つ感情的な力を直接的に伝えることを目指しており、額縁はその体験を妨げると考えたのです。

ロスコは作品の展示方法に非常にこだわりました。絵画は壁に直接掛けられ、白い壁そのものがフレームの役割を果たします。この「壁をフレームとして使う」というアプローチは、20世紀美術において重要な意味を持ちました。

しかし興味深いことに、額縁の完全な否定ではなく、むしろ「フレーミング」という行為そのものを意識的に再考することが、この時期の芸術家たちの関心事だったのです。額縁がなくても、作品をどこに、どのように配置するかという「フレーミング」の問題は残ります。

現代における額縁の意義

現代の美術館では、額縁の専門家やデザイナーが、歴史的に重要な額縁を修復したり、新たに制作したりしています。
作品に対して歴史的に適切な額縁を選ぶことが推奨される一方で、最終的な選択は所有者の好みに委ねられることもあります。

ただし、オリジナルの額縁と絵画の組み合わせが残っているケースもあります。
Jan van Eyck(ヤン・ファン・エイク、1390年頃-1441年)の作品などには、当時のままの額縁が残されている例もあり、これらは作品の本来の姿を伝える貴重な資料となっています。

額縁には、作品を保護し、美的に補完し、歴史的文脈を提供するという、時代を超えた普遍的な価値があります。
1980年代以降、UVカット機能を持つガラスやアクリルなど、保護材料の技術は飛躍的に進歩しました。
自然な木材や金属だけでなく、様々な色やマット仕上げの素材が利用可能になり、額縁の選択肢は大きく広がっています。

同時に、額縁の研究分野も発展を続けています。
額縁の裏面に残された銘文や署名、展覧会のラベル、税関の印などを丁寧に調査することで、作品の所有の歴史を辿ることができます。これらの情報は、美術史研究やコレクションの歴史を理解する上で欠かせない要素となっているのです。

まとめ

額縁は単なる装飾ではありません。
それは絵画が生まれ、所有され、展示される歴史と深く結びついた、文化的な装置です。中世の教会建築の一部として始まった額縁は、ルネサンス期に独立した芸術作品となり、バロック時代には富と権力の象徴へと変化しました。
近代化の波の中で簡素化され、20世紀には存在そのものが問い直されました。

しかし額縁が果たしてきた役割、つまり作品を保護し、現実と虚構の境界を示し、所有を象徴し、鑑賞体験を形作るという機能は、今も変わらず重要です。
美術館で絵画を見るとき、ぜひ額縁にも目を向けてみてください。
そこには、何世紀にもわたる美術の歴史と、人々の作品に対する想いが刻まれているのです。

## 参考文献・参照元
- Art & Object. "Framing History: A Study of the Craftsmanship of Picture Frames." https://www.artandobject.com/news/framing-history-study-craftsmanship-picture-frames
- Frame It Easy. "The History Of Picture Frames: How It All Began." (2024) https://www.frameiteasy.com/learn/a-brief-history-of-picture-frames/
- ABC Fine Art. "The History of Picture Framing: A Look Back at the Evolution of Frame Designs." (2023) https://abcfineart.com/blog/history-picture-framing-evolution-frame-designs/
- The Frame Blog. "Frames in paintings: Part 1 – Gothic, Renaissance and Mannerist." (2024) https://theframeblog.com/2023/02/05/frames-in-paintings-part-1-gothic-renaissance-and-mannerist/
- The Frame Blog. "The rise of the all'antica altarpiece frame." (2015) https://theframeblog.com/2015/06/18/the-rise-of-the-allantica-altarpiece-frame/
- The Frame Blog. "Histories of the frame." (2024) https://theframeblog.com/2024/09/29/histories-of-the-frame/
- RISD Museum. "Framing Art and the Art of the Frame." https://risdmuseum.org/manual/383_framing_art_and_the_art_of_the_frame
- World History Encyclopedia. "Renaissance Altarpieces." (2021) https://www.worldhistory.org/article/1889/renaissance-altarpieces/
- Smarthistory. "The Medieval and Renaissance Altarpiece." https://smarthistory.org/altarpiece-medieval-renaissance/
- Wikipedia. "Mark Rothko." https://en.wikipedia.org/wiki/Mark_Rothko
- The Metropolitan Museum of Art. "The Robert Lehman Collection. Vol. 13, Frames." (2007) https://www.metmuseum.org/met-publications/the-robert-lehman-collection-vol-13-frames

配信元: イロハニアート

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