「助けて」と言えなかった母親…赤ちゃん3人遺棄事件、弁護人が語る"見えない生きづらさ"

「助けて」と言えなかった母親…赤ちゃん3人遺棄事件、弁護人が語る"見えない生きづらさ"

●責任能力に影響しない障害を軽視した裁判所

──判決は懲役6年で確定しました。

犯行に至った背景には「発達障害」「水商売の男性による風俗業界で働く女性に対する経済的・精神的・性的な搾取」「コロナ禍」という三つの要因が重なっています。

コロナ禍が要因というのは、赤ちゃん3人の中で死産等ではなく、殺人と認定された子の事件は、コロナ禍で対人接客業が成り立たなくなった令和2年4月に発生しているからです。

障害特性については裁判でも訴えましたが、裁判所は「責任能力に影響しないレベルの障害特性」をあまりに軽視し、残る二つの要因には目を向けませんでした。あくまで経緯にすぎず、動機そのものではないというのでしょう。

こうした事情が量刑を判断するうえで重視されないのは妥当なのか、大きな疑問が残ります。ただ、彼女自身は、刑事手続きを通して自分の生きづらさやその原因に気づき、支援を受けての再出発を想像し、将来への希望を見出せたと感じています。彼女は必ず生き直せると信じています。

●「助けて」を言えない人がいる現実

──社会や周囲に求めたいことはありますか?

刑事弁護をしていると、障害特性や環境の劣悪さ、虐待や搾取に遭った被害体験などの生きづらさが要因であると感じることが多いです。それが自己責任の名のもとに、悪質な事件の犯人として罰を受ける。「なぜ弱い人がさらに追い込まれるのか」と思うことがよくあります。

今回の彼女のような風俗で働く人についても、「本人が好きでやっている」という認識の方もいるかもしれません。しかし、実際には発達障害や精神障害といった生きづらさを抱える人が、周囲の食い物にされているという側面があるかもしれないという目線が必要だと感じます。

今回の女性は、困っていると気づきにくい、気づいてもSOSを出せない、相談できないという方でした。「助けて」と言えない人がいる。その現実を社会に知ってほしいと思います。

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