
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、『おツカレお姉さんと腕のお化け』(KADOKAWA刊)を紹介する。「月刊少年シリウス」で連載中の『ヴォカライズ』(講談社刊)で知られる作者の小菊路ようさんが、9月3日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、5.4万件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、小菊路ようさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
■仕事で寝付けないお姉さんの前に現れた腕のお化け

ある日、仕事で悩んでいるお姉さんは良く寝付けず、夜中に目が覚めてしまう。ヒタ…という音がする方を見ると、そこには床を這う腕が。腕のお化けかと思ったお姉さんは、自分の方に伸びてくる腕から身を守ろうとするが見失ってしまう。
しかしその次の瞬間、背後から伸びてくる腕に抱きしめられ幸福を感じていた。また別の日、外回りの仕事で疲れて寝付けずにいると、再び腕のお化けが現れて足を掴まれ引っ張られてしまうお姉さん。思わず「怖い!痛い!」と叫ぶお姉さんだったが…。
本作を読んだ人たちからは、「ホラーかと思って読み進めたらほっこりした」「有能すぎて欲しい」「うちにも来て」「こんなお化けなら歓迎したい」など、多くのコメントが寄せられている。
[HEAD]作者・小菊路ようさん「あまり頭を使わず読めるくだらない漫画を描こうと思ったのが始まり」[/HEAD]

――本作のお話の発想の源はどこだったのでしょうか?
漫画やアニメ好きな友人と会って近況などを話した時、友人が「最近は仕事や家のことで疲れてしまってシリアスな漫画を読む気になれない」と話していたのがきっかけで、あまり頭を使わず読めるくだらない漫画を描こうと思ったのが始まりです。また、自分自身がオカルトやホラーコンテンツが好きというのもあるので、それと組み合わさってお疲れ(お憑かれ)なお姉さんが腕だけのお化けに出会うという話が出来たのではないかと思います。
――本作では、お姉さんの状況に応じて腕のお化けがサポートしてくれている描写にニッコリしてしまいました。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
こだわりという程ではないかもしれませんが、お話を考えるうえで意識したのは日常で多くの人が思うであろう小さな願望を入れ込もうということです。例えば、「疲れて帰宅したらご飯がつくってあった」「朝の支度で歯磨きとヘアセットを同時にできたら」のような。話が進むにつれ彼(?)の有能さだけでなく少し抜けた部分が出てくるのでそこも面白がって読んで頂けたらと思います。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
第14話の歯医者の回が気に入っています。主人公が歯の治療を受けている際、歯科医が「嫌な感じがしたら手を挙げて教えてくださーい」と言う背後で治療を受けてない腕のお化けが震えながら手を挙げるシーンです。以前ニコニコ静画でこの回を公開した時の読者さんの反応が結構良く、「久しぶりに漫画で爆笑した」というコメントも頂き嬉しかったんです。自分でもテンポ感や表情が狙った通りに描けたという感じもあり、ずっとこの回が気に入っています。
――ストーリーを考えるうえで気をつけていることや意識していることなどについてお教えください。
とにかくラストはバカバカしいor何かイイ話風に終わらせることは大事にしました。漫画を読むのは案外疲れる作業だと思います。なので、読後に「なんかおもろかった!」「なんかイイハナシだった気がする!」と思ってもらえて、次の瞬間には画面を閉じてニコニコしながら日常に戻ってもらえるのが理想です。
――小菊路ようさんの作品は、表情(本作では特に驚き・恐怖)がとても豊かだと思いました。作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか?
「驚き・恐怖」からの「ほっこり・笑い」のギャップが大きいほどわかりやすく面白いと思っているのでホラーっぽい演出での驚き顔・恐怖顔・シリアス顔は無意識に強調して描いてしまっているのかなと自己分析します。個人的には、料理の作画の方が頑張りすぎる傾向があります。
――今後の展望や目標をお教えください。
個人的には書籍化までできたことで、ひとまず区切りが出来た感じがしているので、この漫画を描くきっかけになった友人に「本になったよ!」と本を渡して、その後続きを描いていくかどうかは読者の方々の反応次第と思っております。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
今作を読んでいただいた皆様ありがとうございます。自分でも自由に楽しく描いたものに反応をいただけてとても嬉しかったです。描き下ろしのエピソードなども加えたものが書籍として出ます。本屋さんやネット書店などで見かけたら、手に取って楽しんでもらえたら嬉しいです。

