要介護者は体力や免疫力が低下している可能性があるため、気管支炎を発症すると、重症化につながる場合もあります。咳や発熱といった症状が長引くことで、食事量の低下や全身状態の悪化を招くケースも少なくありません。
本記事では要介護者の気管支炎について以下の点を中心にご紹介します。
気管支炎と風邪や肺炎の見分け方
医療機関を受診すべき目安
慢性気管支炎の場合、介護保険や要介護認定の対象になるのか
要介護者の気管支炎について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
高山 哲朗(かなまち慈優クリニック)
理事長 高山 哲朗
平成14年慶應義塾大学卒業
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、
平成29年 かなまち慈優クリニック院長
【所属協会・資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長
気管支炎の基礎知識

気管支炎と風邪や肺炎をどのように見分ければよいですか?
気管支炎と風邪、肺炎はいずれも呼吸器の感染症ですが、炎症が起きている部位や症状の現れ方に違いがあります。見分ける際は、咳の状態や痰の性状、発熱の経過、呼吸症状の有無などを総合的に確認することが重要です。
風邪は主に鼻や喉など上気道の炎症で、軽い咳や喉の痛み、鼻水といった症状が中心であり、1週間前後で改善することが多いとされています。一方、気管支炎は、炎症が気管や気管支に及ぶため、胸の奥から出るような強い咳が長引き、粘り気のある痰を伴う可能性もあります。咳が数週間続くケースも珍しくありません。
さらに肺炎になると炎症は肺胞にまで広がり、高熱や強い倦怠感、息切れ、胸痛など全身症状が目立つようになります。呼吸時の異常音や酸素不足による顔色の変化がみられることもあり、重症化する可能性がある点も特徴です。
急性気管支炎と慢性気管支炎の違いを教えてください
急性気管支炎と慢性気管支炎は、いずれも気管や気管支に炎症が起こる病気ですが、原因や症状の続く期間、治療の考え方が異なります。
急性気管支炎は、主にウイルスや細菌の感染によって発症し、風邪やインフルエンザの後に発症するケースが多いとされています。咳や痰、発熱、倦怠感などの症状が現れますが、数日から数週間程度で改善する一過性の経過をたどります。適切な治療を行うことで、症状の軽減や回復を助けることにつながります。
一方、慢性気管支炎は長期間にわたって炎症が持続する状態を指し、痰を伴う咳が1年のうち3ヶ月以上続き、それが2年以上繰り返される場合に診断されます。主な原因は喫煙などの有害物質の長期吸入で、自然に治癒することは少ないとされています。継続的な管理や治療が必要になります。
気管支炎を放置すると、どのようなリスクがありますか?
気管支炎を放置すると、炎症が長引くことで気道への負担が増し、ほかの呼吸器疾患を引き起こすリスクが高くなる可能性があります。例えば、炎症が肺にまで広がると肺炎へ移行することがあり、高熱や強い倦怠感、呼吸困難など重い症状を伴う場合もあります。
また、喫煙歴や基礎疾患がある方は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)へ進行し、慢性的な咳や痰、息切れが続く状態につながることもあります。さらに、気道の過敏性が高まることで気管支喘息を併発し、発作的な咳や呼吸が苦しくなるケースも考えられます。
要介護者に気管支炎が疑われる場合の対応方法

要介護者にどのような症状が見られたら注意すべきですか?
要介護者に気管支炎が疑われる場合は、早期に異変に気付くことが重要です。代表的なのは咳や痰の変化で、初期は乾いた咳でも、徐々に痰を伴う咳へ変わることがあります。
痰の量が増えたり、呼吸時に“ゼーゼー、ヒューヒュー”といった喘鳴がみられたりする場合も注意が必要です。また、軽度の発熱や全身のだるさ、食欲低下が続くときも呼吸器の炎症が進んでいる可能性があります。
さらに、胸の痛みや圧迫感、息切れなど呼吸のしづらさがみられる場合は、重症化のサインとなる場合があります。要介護者は体力や免疫力が低下している場合も少なくありません。症状が長引いたり急激に悪化したりするケースも考えられるため、咳や痰が続く、発熱がぶり返すなどの変化があれば、早めに医療機関への相談が望まれます。
医療機関を受診すべき目安を教えてください
咳が続いている場合でも、「様子を見てよいのか」「すぐ受診すべきか」で迷うご家族は少なくありません。高齢の方は症状が急激に悪化したり、重い疾患が隠れていたりする可能性もあるため、一定のサインを見逃さないことが大切です。
発熱や息苦しさがみられる場合では受診が望ましいでしょう。症状だけで判断することは難しいことが多い傾向にあります。特に高齢者では発熱に乏しいケースもあるため、普段の様子と異なるようであれば受診を検討するなどの対応が必要です。
受診を検討すべき目安としてまず挙げられるのが、咳や痰が2週間以上続く場合です。風邪による咳は1週間前後で落ち着くことが多い傾向にあるため、長引く場合は気管支炎や肺炎など別の疾患が関与している可能性があります。
また、痰に血が混じる、強い息苦しさや胸の痛みを伴うといった症状がある場合も、呼吸器や心臓のトラブルが疑われるため早急な受診が望ましいでしょう。
さらに、夜間や横になると咳が悪化する、高熱や体重減少がみられるといった変化も注意が必要なサインです。これらは心不全や重度の感染症、腫瘍性疾患などが背景にある可能性も考えられます。高齢の方にみられる「いつもと違う様子」にご家族が早めに気付き、無理をさせず医療機関へつなげることが大切です。
気管支炎になった場合、介護中にすべきでないことはありますか?
気管支炎になった場合、介護中は、無理に離床や活動を促すことは避けましょう。体力が低下している状態で負担をかけると、咳や呼吸困難が強まる可能性があります。また、水分摂取が不十分になることも注意が必要です。水分不足は痰が切れにくくなる要因となるため、こまめな補給が大切です。
さらに、室内の乾燥や換気不足を放置することも望ましくありません。乾いた空気は気道を刺激し、炎症の悪化につながる可能性があります。加えて、人が多い場所への不用意な外出やマスク未着用の場合は、感染症の重複リスクを高めるため避けるべきでしょう。喫煙環境にさらすことも気管支への刺激となるため厳禁です。
このほか、睡眠不足や強いストレスを与える生活環境も回復を妨げる要因になりえます。

