避妊だけでなく、月経痛の軽減や周期の安定など、女性のQOL向上に役立つ「低用量ピル」。一方で、飲み始めの吐き気や不正出血、まれに起こる血栓症のリスクなどに不安を感じる方も少なくありません。本記事では、産婦人科医の市川先生(アロリエクリニック)に、ピルの正しい服用方法から副作用との付き合い方、処方できないケースまで、安心してピルを活用するための基礎知識を聞きました。
※2025年10月取材。
≫【1分動画でわかる】知っておきたい!低用量ピルで起こりやすい副作用
監修医師:
市川 りえ(アロリエクリニック)
東邦大学医学部卒業。その後、東邦大学医療センター大橋病院産婦人科入局、病院やクリニック勤務で経験を積む。2023年、東京都品川区に「アロリエクリニック」を開院。日本産科婦人科学会専門医、臨床分子栄養医学研究会認定医。日本思春期学会、日本性感染症学会、日本抗加齢医学会、点滴療法研究会の各会員。
まず知っておきたい低用量ピルの基本
編集部
低用量ピルとはどのような薬なのか教えてください。
市川先生
低用量ピルは、女性ホルモンを一定量補うことで排卵を抑え、避妊効果を得る薬です。ホルモンの変動が安定することや、子宮内膜を薄くする効果があるため、副効用として月経痛、過多月経の軽減、周期のコントロールにもつながります。
編集部
避妊効果は服用してからどのくらいで安定するのでしょうか?
市川先生
薬の種類にもよりますが、一般的には飲み始めて7日ほどで安定してきます。月経痛の改善などは1〜3カ月ほどで実感されることが多い傾向にあります。
編集部
毎日同じ時間に飲んだほうがよいと聞いたことがあります。それはなぜですか?
市川先生
ホルモン量を一定に保つためです。服用時間がずれると効果が弱くなってしまうので、「起きたらすぐ」や「就寝前」など、生活リズムに組み込んでしまうと、飲み忘れや時間のずれなどを減らすことができます。不規則な生活の人は、携帯タイマーなどを利用するなどの工夫をしてみましょう。
編集部
ピルを飲んでいた場合、その後の妊娠に影響はありますか?
市川先生
そんなことはありません。医師の指示のもとに処方・服用し、妊娠を考え始めたら、きちんと服用をストップすれば、その後の妊娠に悪影響を及ぼすということはありませんので、過度に心配しなくても大丈夫です。
低用量ピル、副作用とリスクを正しく理解する
編集部
副作用も気になります。どのようなものがありますか?
市川先生
最も多い副作用は不正出血、次に多いのが吐き気です。ホルモンが急に変化することで妊娠初期のつわりに似た状態になり、悪心や嘔吐が出ることがあります。実際、服用者の約30%に吐き気が見られます。そのほか、頭痛や目のかすみ、動悸、皮膚の湿疹、むくみによる多少の体重増加、くわえてカンジダや性交痛を招きやすくなるといったこともありますが、多くは一時的で自然に落ち着きます。
編集部
副作用とは別に、リスクというものもあるのでしょうか?
市川先生
そうですね。静脈血栓症や脳卒中といったリスクが報告されています。ただし発症の確率は非常に低く、例えば静脈血栓症については、ピルを飲んでいない人と比べるとわずかに上がりますが、妊娠中の静脈血栓症のリスクよりも低いといわれています。
編集部
不正出血はなぜ起こるのでしょう?
市川先生
ほとんどの場合、ピルのホルモンに体が慣れるまで、子宮内膜が安定せず、剥がれやすい状態になるために起こります。いわば“慣れる過程”で起こる現象といえます。
編集部
不正出血があった場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
市川先生
少量で痛みや発熱がなく、飲み忘れもない場合はそのまま服用を続けて問題ありませんが、性病や子宮頸がんの症状である可能性もあるため、それらの検査を受けたことのない人は受けることをおすすめします。多くの不正出血は3カ月以内に自然と治まります。ただし、3カ月以上続く、出血量が多い、強い腹痛を伴うなどの症状があれば受診をおすすめします。きちんと診察を受け、薬を変更してもらうことなどで改善することもあります。

