タバコをやめるとどんな変化がある?メディカルドック監修医が男女別の変化ややめる方法などを解説します。

監修医師:
菊地 修司(医師)
山梨大学(旧・山梨医科大学)医学部医学科卒業後、茨城保健生活協同組合城南病院に研修医として入職。東葛病院外科、北海道勤医協中央病院麻酔科で研修後、城南病院に戻り、医局長、副院長を経て、2021年より同院院長。2024年より茨城保健生活協同組合理事長を兼任。専門は総合診療・訪問診療。2009年に消化器外科から総合診療科に転科し現在に至る。日本医師会認定産業医。
タバコを吸いたくなる原因

ニコチン依存(身体的依存)
タバコの煙に含まれるニコチンは、肺から吸収されてわずか10秒ほどで脳に届きます。すると脳内でドーパミン(快楽物質)が放出され、「気持ちいい」という感覚が生まれます。これを繰り返すうちに、脳がニコチンなしではドーパミンを出しにくくなり、血中のニコチンが減ると「イライラする」「集中できない」といった離脱症状が出てきます。これが「もう1本吸いたい」という欲求の正体です。
習慣・条件反射(心理的依存)
「食後の一服」「コーヒーのお供」「仕事の合間」など、特定の場面と喫煙が結びつく「喫煙トリガー」も厄介な存在です。ニコチンが足りていても、いつもの場面になると自動的に手が伸びてしまいます。禁煙してしばらく経ってから再喫煙してしまう方の多くは、この心理的な結びつきがきっかけになっています。
ストレスや感情的要因
「タバコを吸うと落ち着く」とおっしゃる患者さんは多いのですが、実はこれは錯覚です。ニコチンが切れたときの不快感(離脱症状)が、吸うことで一時的に解消されるだけなのです。むしろニコチンは交感神経を刺激して心拍数や血圧を上げるため、体にとってはストレスが増えている状態です。
社会的・環境的要因
職場や友人に喫煙者が多いと、喫煙が「普通のこと」に感じられ、やめようという気持ちが起きにくくなります。喫煙所での会話が一種のコミュニケーションになっている方も少なくありません。なお、国立がん研究センターの統計では、2024年時点の成人喫煙率は男性24.5%、女性6.5%と減少傾向にあり、社会全体で見れば禁煙は確実に広がっています。
離脱症状による再喫煙
禁煙を始めると、イライラや不眠、頭痛などの離脱症状が現れます。ピークは2〜3日目で、ここが一番つらい時期です。「やっぱり無理だ」と感じやすいのですが、この山を越えれば症状は徐々に落ち着いていきます。後述する禁煙外来や補助薬を使うことで、この時期をずっと楽に乗り越えられます。
タバコを吸い続けるとどんな病気を発症する可能性がある?

肺がん・呼吸器系のがん
国立がん研究センターの大規模調査(JPHC Study)では、喫煙者が肺がんになるリスクは非喫煙者に比べて男性で約4.5倍、女性で約4.2倍と示されています。日本肺癌学会の禁煙宣言(2024年改訂版)によれば、男性の肺がんの約70%、女性の約15%が喫煙に起因すると推定されています。タバコの煙には70種類以上の発がん性物質が含まれ、口腔がんや咽頭がん、食道がんなど、煙が直接触れる部位のがんリスクも上がります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDは「タバコ病」とも呼ばれ、原因の約90%が喫煙です。長年の喫煙で気道や肺胞に慢性的な炎症が起き、息切れや咳・痰が続きます。一度壊れた肺胞は元に戻らないため、禁煙で進行を食い止めることが治療の柱になります。
虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
喫煙は動脈硬化を進め、心臓の血管が詰まりやすくなります。喫煙者が狭心症や心筋梗塞を起こすリスクは非喫煙者の約2〜3倍です。ただし、禁煙から1年経つとリスクはおよそ半分にまで下がります(参考:国立がん研究センター がん情報サービス)。
脳卒中(脳梗塞・脳出血)
喫煙者の脳卒中リスクは非喫煙者の約1.5〜2倍です。禁煙を続ければ5〜15年でリスクは非喫煙者とほぼ同じ水準にまで下がることがわかっています(参考:国立がん研究センター がん情報サービス)。
2型糖尿病
ニコチンはインスリンの働きを鈍らせ、血糖コントロールを乱します。喫煙者が2型糖尿病になるリスクは非喫煙者の約1.4倍です。糖尿病を発症すると心血管疾患や腎臓病のリスクもさらに上がるため、「病気が病気を呼ぶ」悪循環に陥りやすくなります。

