奏斗くんママは「友達価格でいいなら、友達技術でいいの?」と蘭子に問いかける。プロの背景にある努力を代弁する彼女の言葉に、周囲のママたちも同調。逃げ場を失った蘭子は、逆ギレしながら園を後にする。
プロにはきちんとした対価を払うべき
「友達技術……? 何よそれ、意味わかんないわよ!」
蘭子さんが声を荒らげます。しかし、奏斗くんママは動じません。
「言葉通りよ。プロとしての対価を払わないってことは、適当に塗られても、すぐに剥げても、爪を傷められても文句は言えないってこと。だって『友達の遊び』なんだから。蘭子さんは、敦美さんの技術を信頼して頼んだんじゃないの? それとも、ただ安く済ませたいだけ?」
「それは……そうじゃないけど……」
蘭子さんの顔がみるみる赤くなっていきます。
「もし私が敦美さんにお願いするなら、絶対にお金は値切らない。だって、彼女がその技術を習得するためにどれだけの時間と学費をかけて、今もどれだけ神経を削って作業してるか、想像がつくから。それを『友達だからタダ同然で』なんて、相手の人生をバカにしてるのと同じだよ」
変わり始めた空気
周りのママ友たちからも、
「確かにそうだよね……」
「美容院とかも、友達だからこそ気を遣うし」と、同意の声が上がり始めました。
蘭子さんは周囲の空気が一変したことに気づき、泳ぐような視線で私と奏斗くんママを交互に見ました。
「な、なによ! みんなして私を悪者にして! もういいわよ、あんな高いサロン、こっちから願い下げなんだから!」
そう叫ぶと、彼女は逃げ出すようにして園門へと向かっていきました。 彼女の背中を見送りながら、私は深く息を吐きました。指先の震えが、ようやく止まりました。

