場の空気は一瞬で変わった
義父・義母・夫の三人を前に、落ち着いた声でこう切り出したそう。「お義父さんが私の母乳を飲んだ行為について、保健師さんと市の子育て相談窓口に相談してきました」
この言葉に、場の空気は一瞬で変わったといいます。
「『性的な発言や行為に該当する可能性が高いそうです。今後同じことがあれば、次は正式な被害として相談します』と伝えたんです」義父は言葉を失い青ざめ、義母も沈黙しました。夫もまた、そこで初めて事態の重大さを理解した様子だったといいます。
綾子さんは続けて、こう言い切りました。
「皆さん『ギャグのつもり』と言っていましたが、ギャグかどうかを決めるのは、やった側じゃありません。受け取った私です」
その言葉を受けた義父は、反省の態度を見せることもなく、ただ舌打ちをしたそうです。
「義父の態度を見た夫は、自ら別居を提案してくれました。引っ越しの準備期間も、『無理してこの家で寝泊まりしなくていいからね。新居に移るまでは実家に泊まったりして、なるべく綾子がリラックスできるように過ごしてよ』と言ってくれて……。正直、やっと理解されたことにほっとしました」
その後、綾子さんたちは義実家を離れ、今も別居中です。
違和感を大切に、一人で抱え込まないで
家庭という閉じた空間の中では、不快な言動や行動が「冗談」「悪気はない」「スキンシップ」といった言葉で正当化されてしまいがちです。しかし綾子さんは自分の受けた扱いを外部の専門機関に相談することで、その行為が許容されるものではないと示すことができました。家族という関係性の中であっても、境界線が踏み越えられたとき、それは明確な被害にもなり得ます。
家庭内の出来事ほど、被害者側も「これくらいで相談したらおかしいかな?」「大ごとにするのはちょっと……」と迷ってしまうものです。ですが違和感を覚えた時点で、その気持ちは大切にされていいものです。一人で抱え込んだり、味方がいないと思う必要はありません。
家庭内での性的な言動やハラスメントについては、法務省の人権相談窓口「みんなの人権110番」などでも相談を受け付けています。「少しおかしいかも」と感じたときに、話を聞いてもらう選択肢があることを、知っておいてほしいと思います。
<取材・文/鈴木詩子>
【ハラスメント・人権問題の相談先】
家庭内での問題や、性的な言動、ハラスメントなどについては、法務省の人権相談窓口でも相談を受け付けており、性別や立場を問わず利用できます。ひとりで悩まず、相談してください。
■ みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)
電話番号:0570-003-110
家庭内でのハラスメント、パートナーや家族からの暴言・暴力・DVのほか、学校や職場でのいじめ、インターネット上の誹謗中傷、差別など、さまざまな人権問題について相談できます。※自動音声ガイダンスに従い、相談内容に応じて案内されます。
■ こどもの人権110番
電話番号(フリーダイヤル):0120-007-110
いじめ問題など、こどもの問題を解決に導くための相談を受け付ける専用相談電話。こどもだけでなく、こどもに関する悩みを持つ大人も利用可能。
■ 法務省LINEじんけん相談(チャット人権相談)/インターネット人権相談
電話の他に、LINEや相談フォームの窓口も。詳しくは「法務局 人権相談」で検索してください。
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

