せっかくの家族旅行、温泉と豪華な食事でリフレッシュしたはずが、翌朝に待っていたのは全身に広がる「激しいかゆみ」だった。
旅行先で起きたトラブルの相談が弁護士ドットコムに寄せられている。
相談者によると、家族と宿泊した温泉旅館で目覚めると、目がかゆくなり、さらに帰宅後には全身にぶつぶつとした「じんましん」のような症状がみられ、かゆみに襲われたという。
振り返ってみれば、チェックイン直後、家族が部屋のほこりっぽさやエアコンのカビ臭さなど衛生状態に不満を感じていたという。
ホテルの衛生の問題をめぐっては、部屋に出た南京虫(トコジラミ)によってかゆみが生じたという報告もよく見うけられる。
じんましんのような症状が出た場合、ホテル側にどのような対応を求められるのか。消費者トラブルにくわしい前島申長弁護士に聞いた。
●弁護士の解説
──宿泊施設に泊まった翌日に体にかゆみやじんましんが出た場合、宿泊先にどのような対応を求められるでしょうか
ホテルや旅館が客と交わす宿泊契約では、宿泊客側は、施設の秩序(ルール)を守り、対価を支払う義務があります。
一方、施設側は、予約の内容に合った客室を提供する義務を負います。
また、単に客室を提供するだけではなく、宿泊契約において、宿泊客の生命・身体・財産に関する安全配慮義務を負っています。
具体的には次のようなものです。
・清掃、防虫、カビの防止など
(旅館業法等に基づく適切な管理を行う衛生環境の保持)
・手すりの固定、火災報知器の設置、避難経路の確保など
(施設設備の安全確認を行う義務)
今回の相談事例では、清掃不足やエアコンのカビ、あるいはトコジラミの発生など、施設側の過失によって健康被害が生じたと考えられます。
この場合、宿泊客側は、施設に対し、債務不履行または不法行為に基づき、損害賠償を請求できる可能性があります。
──治療費なども請求できますか
はい。一般的に請求できるのは、次のようなものが考えられます。
(1)治療費・薬代および通院交通費
(2)かゆみや体調不良で仕事を休まざるを得なかった場合の休業損害
(3)入通院期間に対する入通院慰謝料
また、あまりにも衛生状態が悪く、本来提供されるべきサービスの質を著しく欠くほど(室内での宿泊ができないような状態)であれば、施設側の客室提供義務自体が履行されていない(債務不履行)と評価できますので、契約の解除により宿泊費の返金や減額も検討できるでしょう。
●証拠が重要! 客室を動画撮影しておこう
──請求しようとする際にはどんな証拠が必要ですか
(1)医師による診断書
症状の原因(トコジラミによる咬傷、カビによるアレルギー反応、ハウスダスト等)を特定した診断書
(2)現場の状況証拠
客室のほこり、エアコンのカビ、虫の死骸の写真・動画など
(3)メモなどの記録
チェックイン時の違和感、発症のタイミング、帰宅後の経過を書いたメモなど
単に「泊まった翌日にかゆくなった」というだけでは、食事や外部環境など施設外に原因がある可能性を排除できません。
【取材協力弁護士】
前島 申長(まえしま・のぶなが)弁護士
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属
交通事故・不動産紛争などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。中小企業の事業継承や家族信託などに注力を行っている。
事務所名:前島綜合法律事務所
事務所URL:https://maeshima.lawer.jp/

