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【東京国立近代美術館】下村観山展レポート!魅惑の展覧会を解説

③下村観山の「時代にふさわしい日本画」が結実

帰国後、観山は日本美術だけではなく、中国美術や西洋美術も含め、幅広く学んだ成果を活かし、謡曲や和歌など日本の古典と関わりの深いテーマを中心に描いていく。

彼は日本がこれまでに培ってきた「伝統」を基盤に、新しい現代的な感覚や見方を盛り込むことで、作品に命を吹き込んでいった。

それは、「時代にふさわしい日本画」という課題に対して観山がたどり着いた答えでもあった。そんな観山の美学の結実ともいえる傑作が、謡曲『弱法師』を題材にした屏風絵〈弱法師〉だ。

下村観山 《弱法師》 1915(大正4)年 重要文化財 東京国立博物館蔵 Image: TNM Image Archives (前期展示3/17-4/12)

下村観山 《弱法師》 1915(大正4)年 重要文化財 東京国立博物館蔵 Image: TNM Image Archives (前期展示3/17-4/12)

主人公の俊徳丸は、河内国の長者・高安通俊の子として生まれたが、讒言によって追放されてしまう。過酷な放浪生活の中で、視力を失った彼は、盲目の乞食(弱法師)として春の四天王寺へ辿り着く。そして、父・通俊の導きによって日想観(沈む夕日を心に留め、極楽浄土を思う瞑想法)を行う。

観山は、このクライマックスの場面を六曲一双の屏風に描き出した。

金色の地に画面の枠をまたいで梅の木が枝を広げている。節くれだった枝々は立体的で力強く、白梅の可憐さと鮮やかなコントラストをなしている。

金の地に白い花は映え、ほのかな梅の香りが立ち上るかのようだ。枝の向こうには襤褸をまとい、やせこけた俊徳丸が横顔を見せ、手を合わせている。その口元にはかすかなほほ笑みが浮かび、幼い頃の幸せな思い出をたぐり寄せているかのようだ。

そして彼の反対側、左隻の端には今しも沈みゆこうとしている夕日が大きな赤い円として表されている。

ここには、周囲の喧騒も、俊徳丸を導く父の姿もない。匂い立つ梅の花と、日輪、そして祈る俊徳丸の姿だけがある。

絶望の中を彷徨いながらも、かすかな救いの気配を感じ取ろうとする俊徳丸自身の心のあり方を静かに、視覚化した作品と言えるだろう。

日本美術にも、西洋美術にも、観山は常にひたむきに向き合い、学ぶことを怠らなかった。そして、彼の作品の基盤には謡曲など、古典的な主題への深い理解と敬意が感じられる。

この堅実で誠実な姿勢があったからこそ、渋沢栄一をはじめとする政財界の人々にも愛されたのだろう。

今回の下村観山展では、代表作《弱法師》を含めた屏風大作の数々から、掛け軸などの小ぶりな作品まで、様々な作品が展示されている。

観山の生涯をたどるのみならず、観山が学んだ対象、描いたテーマ、人との関わりなど様々な視点からの見方が提示され、観山の画業が立体的に浮かび上がる。是非、この機会に足を運び、下村観山という画家の奥深い世界に触れてみてほしい。

展覧会情報

下村観山展 

会  期:2026年3月17日(火)~5月10日(日)
会  場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
休館日 :月曜日(ただし5/4は開館)
開館時間:10:00~17:00(金曜・土曜は10:00~20:00)※入館は閉館の30分前まで
観覧料(税込)
一般/団体券 1,800円、当日券2,000円
大学生/団体券 1,000円、当日券1,200円
高校生/団体券 500円、当日券700円
主  催:東京国立近代美術館、日本経済新聞社、テレビ東京、BSテレビ東京
協賛:ライフアートブックス
特別協力:神奈川県立歴史博物館、横浜美術館
協  力:Vixen、 国立能楽堂

巡回情報
【会場】和歌山県立近代美術館
【会期】2026年5月30日(土)~7月20日(月・祝)
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

配信元: イロハニアート

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