私は50代半ばの会社員です。これまで30年以上、仕事と家事、育児の両立に追われる日々を過ごしてきました。子どもが独立し、職場でも中堅以上の立場となったころ、ようやく少し肩の力を抜けるようになるかと思っていました。しかしその一方で、日々の業務を淡々とこなすだけの自分に、どこか満たされない感覚を抱えていたのも事実です。
穏やかな日常の中で芽生えた違和感
当時の私は、大きなトラブルさえなければそれで十分だと考え、毎日のルーティンワークをこなしていました。新しいことに挑戦するよりも、現状維持に安心感を覚えていたのです。
自分では「無理をしない大人の選択」をしているつもりでしたが、振り返れば、それはどこか気持ちにフタをしていた状態だったのかもしれません。
何げないひと言が突きつけた現実
そんなある日の昼休み、若手社員のAさんと雑談をしていたときのことです。「いつも落ち着いていて、ミスもなくてすごいですね」と声をかけられ、私は軽い気持ちでこう答えました。
「この年齢になると、新しいことに挑戦する気力もなくて、定年まで無事に過ごせればそれで十分なの」
するとAさんは少し間を置いて、真顔で「なんだか、人生の『消化試合』をしているみたいですね」と言いました。
その瞬間、頭の中が真っ白になりました。指先が冷たくなるような感覚とともに、その言葉が深く胸に刺さったのを覚えています。

