あかねは、過去に起きたさえこのドタキャン事件を思い出します。さえこは彼氏の家で寝過ごして、あかねを2時間近くも待たせたことも…。当時の自分を振り返り、さえこが10年間変わっていないことを再認識するのでした。
友人のひどすぎる遅刻癖
さえこのドタキャン癖は、本当に根深い。今日、マサトとリビングで風香を寝かしつけているとき、ふとその話になって思い出した。
「そういえば、昔もひどかったよな、さえこさん。あの話、今思い出してもすごいわ」
マサトが笑いながら言うから、私も苦笑いしちゃった。
あれはまだ私たちが独身同士、22歳くらいのころだったかな。さえこから「紅葉を見に行こう」って誘われたんだ。紅葉の有名スポットから少し離れた、何もない田舎の駅で待ち合わせ。
「あかね、紅葉見に行くの楽しみだよね!ちょっと遠いけど、秋の景色最高だろうなあ~」
さえこはあんなにウキウキしてたのに。約束の時間を過ぎてもさえこは来ない。LINEを送っても既読もつかない。電話をしても出ない。
(やだ、もしかして事故とか!?)
最初は本当に心配した。その日はやけに寒くて、駅前で震えそうになりながら待った。
2時間待たせたお詫び
何度も電話していたら、1時間近くたってやっとつながった。
「あ、あかね? ごめん!今起きた!」
「今って…何時だと思ってんの? 寒くて死にそうだよ!」
「えー、ごめんごめん! なんか昨日の夜さ、彼氏の家で飲みすぎて、そのまま寝ちゃって…」
「は?」
「ちょっと待っててくれる?急いで行く!」
私、その時、あまりの身勝手さに言葉も出なかったわ。結局、その何もない田舎の駅で2時間近く待った。周りにはコンビニすらない、肌寒い風が吹く中。
「あ、あかね、ごめんねー!彼氏の家にいたから遅刻とかほんとクズよね!自分でも思うわ。これ、お詫びに…!ハイキングしながら食べようよ」
そう言って、さえこが私に差し出したのは、スーパーの特売で買ったような袋菓子。私を2時間待たせたお詫びがそれ?あまりのことに言葉も出ず、苦笑いするしかなかった。

