大腸がんは、日本人にとって身近ながんです。なかには、コーヒーで予防できるといった噂を耳にしたことがある人もいるでしょう。実際にはどのような対策が有効なのでしょうか。今回は大腸がんの基本的な知識からコーヒーと大腸がんの関係、そして予防において本当に大切な生活習慣や検診の考え方について、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院院長の柏木宏幸先生に詳しく解説いただきました。
※2026年1月取材。

監修医師:
柏木 宏幸(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院)
2010年埼玉医科大学卒業後、沖縄にて初期臨床研修をおこない、東京女子医科大学病院消化器病センター内科へ入局。女子医科大学病院消化器内科助教となり複数の出向病院で勤務し、2023年4月に池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック開業。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、一般社団法人日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医、難病指定医。
大腸がんは身近な病気? 生活習慣と発症リスクの関係
編集部
大腸がんはどのくらい身近な病気なのでしょうか? 誰でもなる可能性があるのでしょうか?
柏木先生
大腸がんは日本人に多く見られる病気で、年間約15万人が診断され、がんの中で最も罹患者数の多い疾患です。生涯のうち大腸がんになる確率は、男性で約10人に1人、女性で約13人に1人とされています。リスク因子は年齢、食生活の欧米化、運動不足、肥満、家族歴などで、誰でも発症する可能性があります。特に50歳以上で発症リスクが高まりますが、最近では20代、30代の患者さんも増えており、今後もさらに増加していくと予想されています。
編集部
生活習慣は大腸がんのなりやすさに関係しますか?
柏木先生
生活習慣は大腸がんのなりやすさ(発症リスク)に大きく関係します。特に日本で大腸がんが増えた原因として、食生活の欧米化が考えられています。具体的には赤身肉や加工肉の過剰摂取、食物繊維の摂取不足が挙げられます。このほか、運動不足、肥満、過度な飲酒、喫煙も発症リスクの上昇要因となります。
編集部
大腸がんを予防するためにはどのような工夫が必要でしょうか?
柏木先生
大腸がんの予防には2つのポイントがあります。1つ目は、日々の生活習慣の見直しおよび改善による一次予防です。適度な運動習慣、野菜や果物を多く含むバランスの良い食事、適正体重の維持、禁煙、節酒といった生活習慣の改善により、大腸がんのリスクを下げることができます。2つ目は、大腸内視鏡検査などを用いた定期検診による二次予防です。大腸がんの多くは、腺腫性ポリープというがんになる前の段階(良性腫瘍)を経て発症します。腺腫性ポリープの段階で発見、切除すればがんへの進展を予防できます。また、大腸がんを発症してしまっても早期段階で発見できれば、治癒が期待できます。
朝のコーヒーで予防できる? 気になる噂の真相
編集部
コーヒーを飲むと大腸がんになりにくいという話は本当なのでしょうか?
柏木先生
コーヒーに含まれるカフェインやポリフェノール(クロロゲン酸)といった抗酸化・抗炎症物質が、一部のがんに対して予防的に働くことが明らかとなっています。そして、コーヒーの摂取が大腸がんの発症や再発リスクを下げる可能性が示されています。しかし、焙煎の度合い、抽出方法、豆の種類や品質、栽培法、保管状態によってコーヒーの成分が大きく変化することからも、研究結果に差が出やすく、コーヒーを飲めば必ず大腸がんの予防につながるという根拠はありません。今後の研究によってさらに有効な飲み方や成分などの解明が進むと予測されますが、特定の食品に頼らず、まずはバランスの良い食事、適度な運動、定期的な検診といった総合的な生活習慣の見直しが重要です。
編集部
特に、朝の時間帯に飲むコーヒーが注目されていると聞きましたがなぜでしょうか?
柏木先生
朝のコーヒーが注目される理由は、腸の蠕動(ぜんどう)運動促進効果にあります。上述した成分が腸を刺激し、排便を促す作用があることが知られています。便秘が続くと、腸内環境の悪化や発がん物質との接触時間が長くなるため、間接的に大腸がんのリスク上昇に関与する可能性があります。朝にコーヒーを飲むことで規則正しい排便習慣が形成され、便秘を防ぐことで結果的に大腸がんのリスク低下に関与すると考えられます。
編集部
研究では、コーヒーと大腸がんの関係はどのように報告されていますか?
柏木先生
大規模研究においても進行大腸がんの再発リスクを低減させたという結果が報告されています。1日4杯以上のコーヒーを飲んだ患者さんでは、ほとんど飲まなかった患者さんに比べ、大腸がんの再発リスクおよび死亡リスクが有意に低かったと報告されました。その他、コーヒー摂取量が1杯未満の人と比較して2杯以上の人は再発率や死亡リスクが低下したという報告が複数あります。コーヒー摂取量は1日3~5杯が最適とされ、4杯が最もリスクが低いというデータも存在します。

