自転車の反則金制度(いわゆる「自転車青切符制度」)が4月からはじまりました。113種類のルールが定められていますが、特に幼児を乗せて自転車を利用する保護者が困惑しているのが手信号と原則歩道走行禁止のルールです。
SNSなどでは「他の規制は遵守できても手信号だけは無理ゲー」「手信号が難しすぎてかえって危ない」「幼児を乗せて車道は危険すぎる」といった声が見られます。実際にこれらのルールを守れないと、即切符を切られることになるのか、解説します。
●手信号(ハンドサイン)が難しすぎる
自転車でも、右折・左折・停止などをするときは合図をしなければなりません(道路交通法53条1項)。
具体的な手信号の方法は道路交通法施行令21条が定めています。右折は右腕を水平に伸ばす、左折は左腕を水平に伸ばす、停止・徐行は腕を斜め下に伸ばす、とされています。
例外的に、方向指示器や灯火を手信号の代わりに使えるとされています。しかし、そのような装備を持つ自転車は現実にはほとんど存在せず、大多数の利用者には関係のない話です。
これまで、自転車に乗っていて手信号を出したことがある人は、ロードバイク愛好者などの一部を除けばほとんどいないのではないでしょうか。
一時的に片手運転となり、不安定になるため、かなり練習しないとなかなかスムーズに出せるようにはなりません。
右左折をしている時や、停止する時には、車体の向きや速度が変化するため、より不安定になります。そこで、早めに手信号を出して、右左折時や停止時には両手で運転する人もいます。
しかし、同条では、続いて「その行為が終わるまで継続しなければならない」と規定されています。
つまり、たとえば停止する場合、完全に止まるまで片腕を斜め下に伸ばし続けなければならない、ということになります。これでは片手しかブレーキを握れません。安全性への懸念から不満の声が出るのは、無理もない面があります。
これまで、手信号を出さないからといって取り締まられることは事実上ありませんでした。 制度の導入によりどうなるかは不透明ですが、これだけ難しいことが出来なかったからといって、直ちに切符を切るような運用にはならないのではないかと思われます。
●幼児を乗せた自転車で歩道を走ったら青切符を切られるのか?
原則として自転車は車道を走らなければなりませんが(道路交通法17条1項)、例外的に歩道を走ることができる場合が定められています(同法63条の4第1項)。
この中には、「児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき」(2号)という規定があり、一見するとこれにあたるようにも見えます。
しかし、同号では、「幼児を乗せている」こと自体は例外の根拠にはなっていません。乗っている幼児ではなく、「運転者(大人)」が問題になります。大人自体が「車道通行が危険と認められる者」でなければならないのです。
他方で、3号では、車道や交通の状況に照らして、通行の安全のためやむを得ないような場合にも例外を認めています。同号により、幼児を乗せた自転車が歩道を走ることが認められることはあるでしょう(常にというわけではありません)。
3号の「やむを得ない」は、実際にはかなり広く解釈されています。幹線道路で交通量が多い、路肩がない、大型車の混入率が高いといった状況であれば、多くのケースで3号に当たると考えられます。さらに、警察庁の通達では、幼児同乗自転車の交通量が多いエリアについて、歩道を自転車通行可にする規制を維持・新設するよう指示される(「良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の更なる推進について」令和4年1月28日、警察庁交通局長通達)など、一定の配慮がなされています。
このような状況下では、幼児を乗せた自転車が歩道を走ることで青切符を切られることは考えにくいと思います。ただし、歩道を走る場合でも、歩道の中央から車道寄りの部分を徐行し、歩行者の通行を妨げるときは一時停止という義務は課されます(同条2項)。
最後に、これは私見ですが、このような混乱が生じるのは、ルールが現実に即しておらず、無理があるからだと思われます。自転車青切符制度を進めるにあたっては、法改正などを通じて現実に即したルールにしていくべきだと思います。
(弁護士ドットコムニュース編集部・弁護士/小倉匡洋)

