有名インフルエンサーの滝川ガレソ氏の投稿をきっかけに、ある“聞き慣れない言葉”が話題になっている。
投稿で使われていたのは「論旨退職」という表現。しかし、正しくは「諭旨退職」(ゆしたいしょく)だ。
一文字違いだが、その差は単なる誤記では片付けられない。
「論旨退職」という言葉は、少なくとも一般的な辞書には見当たらない。一方で、諭旨退職は、企業が従業員に対しておこなう処分の一つとして、実務上広く使われている。
とはいえ、この“うっかりミス”は決して珍しいものではない。
ネット上を見渡せば、同じように間違えている例はいくつも見つかる。では、その「諭旨退職」とは、実際にはどのような位置づけの処分なのか。
●最も重い処分ではない
企業による処分にはいくつかの段階があるが、その中で最も重いのが「懲戒解雇」とされる。
これに対して、「諭旨退職」は、同じく懲戒処分の枠組みにありながらも、「懲戒解雇よりマシ」くらいの位置づけだ。処分の中では重い部類に入るが、懲戒解雇を一定程度和らげる運用がされている。
一般的には、従業員を諭し、会社の指定する期間内に本人が退職届を提出できるというものだ。期間内に退職すれば、懲戒解雇とはならない、といった運用がされている。
なお、会社によっては就業規則上「諭旨解雇」と規定している場合もあり、実質的にほとんど同じである。
懲戒解雇では退職金が支給されないケースが一般的だが、諭旨退職(解雇)では全部または一部が支給されることもある。
もっとも、こうした運用から「実質的に自主退職に近いのでは」と受け止められることもあるが、性質としてはあくまで会社側の処分だ。本人の自由意思による退職とは位置づけが異なる。
●“会社の裁量”にも限界がある
では、会社が判断すれば、どのような場合でも諭旨退職(解雇)にできるのか。
結論から言えば、そうではない。
従業員を失職させる以上、その判断には一定のハードルが設けられている。
就業規則に根拠となる規定があることはもちろん、処分の内容が行為に見合ったものといえるか、本人に弁明の機会が与えられているかといった点が問われる。
こうした要件を満たさない場合には、後に無効と判断されるリスクもある。
何気ない言い間違いが注目を集めた今回の出来事は、用語の正確さだけでなく、その背後にある“重み”まであらためて浮き彫りにしたといえそうだ。

