
櫻坂46の三期生が総出演するドラマ「路地裏ホテル」のエピソード3「ハートに火を点けて」(前後編)が、4月3日と10日にLeminoで配信された。谷口愛季が演じるミュージカル俳優の卵・吉井スズカが、やむを得ない事情で“路地裏ホテル”の205号室に宿泊。すると、なぜかパラレルワールドへと迷い込み、落ちぶれた“おっさん”バンドと、そのボーカルの娘・ノア(村井優)と出会った。(以下、ネタバレを含みます)
■エピソード3の主人公は谷口が演じる役者の卵
本作は、櫻坂46の三期生11人が出演する青春ファンタジーオムニバスドラマ。都会の喧騒から離れた場所にひっそりと佇む「路地裏ホテル」を舞台に、支配人(仲村トオル)に鍵を渡され“205号室”に入った宿泊客たちが不思議な世界を体験しながら、さまざまな悩みと向き合いつつ成長する様を描く。
エピソード3でホテルを訪れたスズカは、北海道の劇団に所属するミュージカル俳優。俳優と言えば聞こえはいいが、芽が出る気配はなく、20歳という年齢もあってオーディションでは「俳優としては遅咲き」と言われてしまうことも。夢を追い続けるか、諦めるべきか、悩んでいた。東京で芸能事務所の新人俳優オーディションを受けた帰り、管制トラブルで飛行機が欠航になってしまい、偶然空いていた“路地裏ホテル”に宿泊することに。
「前向きになれる部屋はありますか?」と聞いて案内された205号室のドアを開けると、まばゆい光に照らされ、なぜかスーツ姿でライブハウスにいた。ふとステージのほうに行ってみると、3人のおじさんたちがライブのリハーサルをしており、何やら揉め始めたかと思えば、「スズカ、水持ってこい」と突然話し掛けられる。
なぜ自分の名前を知っているのだろうと困惑するスズカ。しかも相手は冗談を言っている気配がなく、悪い夢を見ているのだろうと自らライブハウスの壁に頭をぶつけ、気を失う。しかし、起きても夢から覚めないままで、ますますわけが分からないスズカ。おじさんたちには記憶喪失になってしまったのかと疑われ、ボーカルのトモヤ(川谷修士)の娘であるノアにも「どうしよう、頭おかしくなっちゃった」と心配されてしまう。
■まさかの異世界転生モノ?
そこで、どうやら“違う世界線”にいることを悟ったスズカ。ノアの話を総合すると、この世界のスズカは、志望の大学に落ちてしまって凹んでいたとき、たまたま路上ライブをしていたおっさんバンド・OPOSSUM(オポッサム)と邂逅。一心不乱に熱唱する彼らの姿を見てハートに火が点き、以来熱狂的なファンに、やがて志願してマネージャーになった。それからノアと共にバンドをサポートしてきたのだという。
オポッサムは、かつてビジュアル系バンドにも負けないくらいの人気があったものの、結成20周年を記念して4年ぶりに全国ツアーを開催するも、ツアーファイナルなのに100人規模のライブハウスで10分の1程度しかチケットが売れないほど落ちぶれている。しかもツアーファイナルの日、「今日をもって解散する」ということも決まった。そこでノアから頼まれ、スズカはラストライブを盛り上げるべくビラ配りを手伝うことに。
最初こそ元気がなかったが、次第に忘れていた情熱を取り戻すかのように元気いっぱいビラ配りをするスズカ。それに触発されるようにトモヤも奮闘するが、結局ラストライブに詰め掛けた観客は前売りからさほど増えず。諦め切れないトモヤが再度“宣伝”に繰り出したところ、迷惑防止条例違反で警察に連行されてしまう。
このままではラストライブの幕が上がらない。そこで、ノアは“別世界”でミュージカル俳優をしているスズカに「あなたがボーカルをやってよ」とお願い。曲も覚えていないのに無理だと断りつつ、ノアに水を向けられると、なぜかオポッサムの歌が口ずさめてしまう。どうやら体に染みついているようだ。
ビラ配りの最中に偶然会った老婦人が実は大物音楽評論家だったという奇跡も呼び水に、スズカはトモヤの代わりにオポッサムのラストライブでボーカルとしてステージへと上がる――。
■音楽センス抜群・谷口のステージングが光る
これまでの「路地裏ホテル」は、過去にタイムスリップするストーリーだったが、エピソード3はパラレルワールドに飛ばされる物語。オムニバスだからこその自由度の高さがあって、飽きさせない作りだ。脚本は櫻坂46の二期生・藤吉夏鈴が主演した映画「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」(2024年)などの大野大輔氏、演出はエピソード1に続いて頃安祐良監督が手掛ける。
エピソード2までは三期生メンバー同士のやりとりがメインだったが、今作はバンドメンバーも強烈に本筋に絡んでくる。ノアの父・トモヤ役の川谷に加え、歌ネタで知られるお笑いコンビ・シマッシュレコードの2人という絶妙のラインを突いたおっさんバンド編成。“あくまでもイメージ”だが、初めての演技に臨む谷口・村井のフレッシュさに彼らの“アクの強さ”が混ざり合ったからこそ、より2人の魅力が際立ったのではないだろうか。
また、ファーストカットからスポットライトを浴びて歌い踊る谷口の姿が見られるのも、Buddies(櫻坂46ファン)にとってはたまらない作りだろう。しかも普段のダンスの踊りとは違う、ミュージカル風の振り付け。それだけでも貴重だが、その後にバンド編成で歌を届ける谷口のステージングも見応え十分。
自身も櫻坂46に入ってすぐの「おもてなし会」では、 「無言の宇宙」をアコースティックギターの弾き語りで披露し、櫻坂軽音楽部ではエレキギターを担当。バラエティー番組「サクラミーツ」のイベントでもギター&ボーカルを務めただけあって、配役的にもピッタリだ。最初の夢を諦めかけたようなスズカが歌う歌声と、始まらなければ終わることもないとばかりに吹っ切れた最後の歌声のギャップも見事だった。
幼少期からアイドルが好きで、アクターズスクール広島(ASH)で鍛えられた音楽の素養。“最初で最後のチャンス”として受けた櫻坂46の三期生オーディションに合格し、初めて参加した5thシングル「桜月」では初の三期生楽曲で本ドラマの主題歌でもある「夏の近道」のセンターに抜てき。先輩たちと合流した最初のシングルである「承認欲求」ではいきなりフロントメンバーの1人に。2025年は13thシングルで初めてBACKSメンバーとして活動し、「BACKS LIVE!!」では“座長”を務め上げた。
本人もインタビューで「最初に台本を頂いたときから、スズカというキャラクターが『本当に私なんじゃないか』と思うほど共感できる部分も多く、ずっと私にしか見えなくて(笑)」と語るほどハマり役であり、自分に重ねて演じられたという。確かに、よく分からないおっさんバンドとノアにグイグイこられて困惑しつつも、頼られるとなんだかんだで面倒を見てしまうところも、“三期生の母”と呼ばれることのある面倒見のいい谷口と重なるところ。
■センス女王・村井の“演技センス”もキラキラ光る
一方の村井=ノアもハマり役だろう。スズカへの“いい意味で距離感がバグっている”ような近さ、明るくてポジティブ、ピュア、けなげにおっさんバンドを鼓舞する姿、ステージに立つとひときわ輝く存在感、村井の魅力が“10000%”詰まっているキャラクターだ。
村井と言えば、同じ振り付けでダンスを踊っても、彼女が踊るとそのダンスは“村井優というジャンル”になるくらい、自分の色を表現することに長けたメンバー。特にバレエ仕込みのエレガントなターンは、他の追随を許さない武器。初の表題曲センターを務めた13thシングル「Unhappy birthday構文」では、終盤の“ぎこちない踊り”からの周囲の雑音を振り切るようにパワフルに踊るパフォーマンスは目を見張るものがあった。マイケル・ジャクソンじゃなくても「ポゥ!」と言いたくなるほど、抜群の表現力を見せつけた。
バラエティー番組でのふわふわした天然な立ち居振る舞い、“センス女王”らしい独特のセンスも印象的だが、場を盛り上げるために本当は臭い鍋を「臭くない」と演技し、誰にも気付かれないくらい、実は演技力にも光るものがある。そんな彼女たちの等身大の演技が堪能できるエピソードだった。
櫻坂46としては、いよいよ4月11日(土)、12日(日)に国内最大級のキャパシティーを誇るMUFGスタジアム(国立競技場)で、「櫻坂46 5th YEAR ANNIVERSARY LIVE」に臨む。彼女たちの表現力が最高に輝く瞬間を目の当たりにした後は、「路地裏ホテル」でまた違った一面を体感してみては。
◆文=月島勝利

