いつも鼻が詰まって息苦しい、もしかすると「鼻中隔弯曲症」かもしれません。鼻の内部で仕切りとなる「鼻中隔」がゆがむことで鼻の通りが悪くなるこの状態は、意外と多くの人が抱えていると言われています。今回は、鼻中隔弯曲症の原因や症状、治療法について「中尾形成外科」の中尾先生がわかりやすく解説します。

監修医師:
中尾 崇(中尾形成外科)
大阪医科薬科大学医学部卒業。その後、日本大学医学部附属板橋病院、鹿児島市立病院、東京女子医科大学附属足立医療センターなどで形成外科医として経験を積む。2024年、東京都港区に「中尾形成外科」を開院。日本形成外科学会専門医、日本形成外科学会レーザー分野指導医/再建・マイクロサージャリー分野指導医。日本美容外科学会(JSAPS/JSAS)、日本頭蓋顎顔面外科学会、日本鼻科学会の各会員。
鼻中隔弯曲症と鼻詰まりの関係性
編集部
そもそも鼻中隔弯曲症とは、どういう状態なのでしょうか?
中尾先生
鼻の中には左右を分ける壁があり、これを鼻中隔と言います。本来、鼻中隔はまっすぐですが、多くの人は成長過程で弯曲します。多少であれば問題ないのですが、曲がりが強いと片側または両側の鼻腔が狭くなって空気の通りが悪くなり、鼻詰まりが慢性化します。風邪やアレルギー性鼻炎と違い、症状が季節や体調で変わらず常に起こっていることが特徴的です。
編集部
鼻詰まりの人は鼻中隔弯曲症の可能性がある、ということですか?
中尾先生
鼻詰まりを起こす原因は多岐にわたり、アレルギーや副鼻腔炎、ポリープなどもその一例です。そのなかでも鼻中隔の変形は非常に多く、日本人の半数以上に認められると言われています。そのため、「普段から片方の鼻だけ詰まる」「横になるとどちらかが詰まる」といった特徴がある場合は、鼻中隔弯曲症の可能性を疑ってもいいと思います。
編集部
鼻中隔弯曲症は、日常生活にどのような影響を与えるのですか?
中尾先生
鼻呼吸がしにくくなるため、口呼吸になりやすくなります。口呼吸は喉の乾燥やいびきの原因となり、睡眠の質を下げます。その結果として、日中の集中力低下や疲労感にもつながる可能性があります。鼻詰まりは「我慢すればいい」と軽視されがちですが、長期的には健康全般に悪影響を与えるので要注意です。
編集部
鼻中隔弯曲症が自然に治ることはありますか?
中尾先生
残念ながら骨や軟骨の形の問題なので、自然に治ることはありません。成長期に形が変わることはあっても、成人後は元に戻ることは期待できません。症状が軽ければ生活上の工夫で対応できますが、重い場合は専門的な治療が必要となります。
鼻中隔弯曲症の原因と鼻詰まり以外の症状
編集部
鼻中隔が曲がる原因はなんですか?
中尾先生
鼻中隔は軟骨と骨によって構成されており、顔の発育とともにこれらも成長します。しかし、それぞれの成長スピードが異なるため、バランスが崩れてしまって弯曲が強まると考えられています。また、生まれつきの骨格も原因の1つです。そのほか、鼻をぶつけた外傷で変形することもあります。ほかの鼻疾患と合併することで、鼻詰まりが目立つようになる人も少なくありません。
編集部
鼻詰まり以外には、どのような症状が出るのでしょうか?
中尾先生
代表的なのは、頭痛や後鼻漏(鼻水が喉に流れること)、いびき、慢性的な喉の痛みなどです。鼻の空気の流れが乱れることで、副鼻腔炎を起こしやすくなる人もいます。また、通りが悪いと無意識に口呼吸になり、むし歯や歯周病のリスクも高まります。そのほか、風邪を引きやすくなる、頭痛に悩まされやすくなるなども考えられるでしょう。
編集部
睡眠にも影響するのでしょうか?
中尾先生
はい。鼻が詰まると十分に空気が入らず、いびきや睡眠時無呼吸症候群の一因となります。睡眠中に酸素が不足すると脳や心臓に負担がかかり、高血圧や動脈硬化といった生活習慣病のリスクも高まります。単なる鼻詰まりと放置せず、睡眠の質に影響していないか注意が必要です。
編集部
鼻中隔弯曲症は子どもにも起こるのですね。
中尾先生
はい、子どもでも生まれつきや成長に伴って弯曲が起こります。小児期は鼻腔が狭いため軽度の弯曲でも詰まりやすく、口呼吸が習慣になると歯並びや顎の発達に影響を及ぼすこともあります。小児のいびきや口呼吸は放置せず、耳鼻科でのチェックをおすすめします。

