脊椎空洞症は、脊椎が竹輪状に空洞化する難病です。
重症化すると車椅子を必要とすることもあるため、症状に気づいた時点でできる限り早めに治療を受けることが大切です。
では、この病気の具体的な自覚症状とはどのようなものなのでしょうか。また、発症に気づいた場合は何科を受診すべきなのでしょうか。
本記事では脊椎空洞症の症状・原因・診療科などについて解説します。あわせて治療方法や日常生活での注意点にも触れています。
ぜひ最後までご覧ください。
※この記事はメディカルドックにて『「脊髄空洞症」とは?余命・症状・原因も併せて解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
脊椎空洞症の症状と原因

脊椎空洞症はどのような病気ですか?
脊椎空洞症は国の指定難病の1つで、脊椎の中に空洞ができる病気です。
通常、脳や脊髄は「脳脊髄液」という液体の中に浮かぶことで外部の衝撃などから守られています。
この脳脊髄液が脊髄に溜まると、水たまりのような空洞が形成されて発症に至ります。ほぼすべての年代でみられる病気ですが、中でも30代の方の発症率が高めです。
どのような症状が出るのか教えてください。
空洞が大きくなると、脊髄が内側から圧迫されてさまざまな症状が生じます。主な症状は次の通りです。
手の感覚異常(痛み・しびれ・麻痺・鈍化)
手の温痛覚障害(痛み・熱を感じない)
腕の脱力感
手足のつっぱり感
筋肉が痩せる
多くの場合、症状には左右差があります。初期には、症状は片側の腕にのみあらわれることがほとんどです。
放置すると症状はもう1方の腕・下半身の順番に広がっていき、最終的に車椅子が必要になることもあります。
実際の症状のあらわれ方・進行スピードは、脊髄内の空洞の大きさ・位置などによって個人差があります。
患者さんはどれ位いるのでしょうか?
正確な患者数は把握できていないというのが実情です。1990年代前半の全国疫学アンケート調査では、この病気の患者数は約2000名でした。
2008~2009年の全国疫学調査では、患者数は2500名と推定されています。
しかしこの調査で分かっているのは、調査期間中に脊髄空洞症で病院を受診していた方の人数です。
つまり発症者でも調査期間中に病院を受診していない方は含まれていません。よって実際の患者数はさらに多いと推測されています。
原因はわかっているのですか?
この病気はさまざまな原因で発症し、なかには原因が特定できないケースもあります。代表的な要因は次の通りです。
脊髄・周辺組織の異常(炎症・梗塞・外傷)
腫瘍
血管障害
キアリ奇形
なかでも代表的とされているのがキアリ奇形です。
キアリ奇形は先天性の形態異常で、生まれつき小脳・脳幹の一部が脊柱管内に垂れ下がった状態を指します。
小脳が脊柱管内に陥入すると体内での脳脊髄液の流れが妨げられるため、リスクが高まると考えられています。
脊椎空洞症の余命は?
具体的な余命は個人差があり、一概にはいえません。多くの場合、進行スピードはゆるやかで、下半身麻痺に至るまでに20年以上かかるケースもみられます。
また、この病気は発症後、症状が改善したり進行が停止したりする場合もあります。
一方で治療せずに放置すると、脊髄の空洞が大きくなり、伴って症状も重篤化しやすくなるため注意が必要です。
予後を長く保つためには、発症が疑われた時点で病院を受診することが大切です。
編集部まとめ

脊椎空洞症は国が指定する難病の1つです。早期に治療すれば改善が期待できるため、症状に気づいた時点で早めに病院を受診することが大切です。
質の高い予後を実現するためにも、気になる症状は放置しないようにしましょう。
参考文献
脊髄空洞症(指定難病117)|難病情報センター

