
4月14日(火)よりCSホームドラマチャンネルにて、イ・ジュニョク主演の韓国ドラマ「良いが悪い、ドンジェ」が放送される(毎週火曜、水曜 昼3:20-/全10回)。本作は、サスペンス・スリラーの最高傑作としてシーズン2まで作られた「秘密の森~深い闇の向こうに~」(現在、ホームドラマチャンネルにて放送中)に登場した検事、ソ・ドンジェを主人公にしたスピンオフ作品。本記事では、作品とソ・ドンジェについて解説する(本作と「秘密の森」についてのネタバレを含みます)。
■「秘密の森」と、ソ・ドンジェ
韓国で、2017年に放送された「秘密の森」は、幼少期の手術により感情を失った検事のファン・シモク(チョ・スンウ)が、破天荒な女性刑事のハン・ヨジン(ペ・ドゥナ)と、迷宮入りした事件の謎を検察内部の不正を暴きながら解き明かしていく極上のクライムサスペンス。登場人物の誰もが怪しく、最後まで真犯人がわからない展開に視聴者は夢中になり、人気を受けてシーズン2も作られた。
その中で、シモクの同僚検事として登場するのが、ソ・ドンジェ(イ・ジュニョク)。ドンジェは、優秀な検事で出世欲や承認欲求が強い人物。だが、シモクにばかり注目が集まり、ライバル心を燃やしている。自分の得になると思えば、上司に媚びを売り、その上司と共に悪徳企業の人物や政治家と懇意になって賄賂を受け取ったり、事件を揉み消したりもする。そんな悪事がバレて、世間で「スポンサー検事」と呼ばれ、権威は失墜…。すると、今度はシモクと手を組み、事件解決に尽力する。状況次第で善側にも悪側にもなる、良く言えば“世渡り上手”だが、信用ならない男だ。
■視聴者に愛された悪役キャラ
ドンジェは「秘密の森」の序盤では悪さ全開で、憎まれキャラだったが、「スポンサー検事」のレッテルを貼られてからは、保身の為に善と悪を行ったり来たりし始め、その姿は時に滑稽で、次第に視聴者から愛されるようになっていった。
そして、シーズン2終了から4年後の2024年に、ドンジェを主人公にした「良いが悪い、ドンジェ」が制作された。それまでも人気作のスピンオフが作られることはあったが、どれもが単発。本作は韓国で初の長編スピンオフ作品となり、成功を収めた。

■「良いが悪い、ドンジェ」ストーリー
本作でのドンジェは、地方の検察庁に飛ばされており、「いつかは最高検察庁に!」の想いをたぎらせているが、昇進は失敗続き。後輩にも先を越されて悔しさ爆発だが、“万年ヒラ検事”として、相変わらず部長に媚びを売っている。そんなある日、彼は田舎の食堂の主人と弁護士の交通トラブルを担当することになるが、状況を調べていくうち、それが偶然の事故ではなかったことに気付く。
真相に近づく中、部長から食事の誘いが。喜び勇んで料亭に行くと、そこには部長の他に“イホン建設”の社長でナム・ワンソン(パク・ソンウン)と名乗る人物が居た。その席ではドンジェは初対面のふりをしたが、ナムは、10年前にドンジェの“スポンサー”だった“サマ建設”社長、パク・ムソク(「秘密の森」の最初の被害者)の部下だった人物。ナムは、食堂の辺り一帯に再開発計画があることを告げ、食堂の主人が土地を売るように仕向けろ、とドンジェに賄賂を渡してきた。だが、ドンジェはそれを突き返した。
以来、ナムは過去にドンジェに賄賂を渡したことなどを持ち出し、何かと絡んでくるように…。そんな中、ドンジェは部長に命じられて女学生の殺人事件を担当させられる。その容疑者はナムの息子…。だが、息子は全面否定。そして、この殺人事件には麻薬取引が絡んでいた…。
ドンジェは善悪で揺れつつも、過去の汚点をネタに立ちはだかるナムと対峙しながら、事件解決にまい進する。その結末は…?


■「秘密の森」とは違うテイスト
「秘密の森」はシリアスで常に緊張感がみなぎっていたが、本作は程よい緊張感で笑える箇所も多く、“ブラックコメディー”の要素が強い。また、ドンジェじたいも、上昇志向や立ち回りのうまさ、図々しさは相変わらずだが、「秘密の森」で、良いことも悪いことも経験して人物像に深みが出ている。加えて、感情もよく表し、非常に立体的なキャラクターになった。
また、ドンジェの言動は笑いを誘うことも多いが、ドンジェは常に真剣。視聴者にとって、演者が「どうだ、面白いだろう」といった雰囲気を出して演じるのを見るほど、シラケることはない。おかしな行動、発言は真剣にやればやるほど笑えるのだ。イ・ジュニョクも、その点は心得ていて、どんなシーンも全力で真剣に演じている。
そして、ドンジェの大きな特徴は、とんでもないセリフの量。「秘密の森」でも8分以上のシーンがあり、彼の事務所の公式インスタグラムにその撮影風景がアップされていたが、ミス無く一発OK。彼は、この撮影と並行して、別の主演作も撮っていた。そんな中でも見事にこなす集中力はさすがだ。今回も、序盤に脚本が12ページにも及ぶシーンがあり、イ・ジュニョクは、韓国の放送終了後に行われた合同インタビューで「脚本を見た時、あまりの多さに息ができなくなった」と振り返っていた。

■良くも悪くもあるドンジェに魅了される
本作は、「秘密の森」を見た方がより楽しめると思うが、見ていなくても、独立した作品として充分楽しめる。ラストまで事件の真相がわからない展開に、「早く次回が見たい!」となるはず。
そして、今回のタイトルには、もちろんドンジェじたいが良いヤツか悪いヤツか、もあるが、彼のおかれた状況が良かったり悪かったり…という意味も含まれている。その狭間を行ったり来たりする彼を楽しんでほしい。と共に、世渡り上手だが今イチうまくいかない、事件を解決するのは“誰か”の為ではなく“自分”の為、うさんくささもあるが、ここぞ!の場面ではカッコよくスマートにキメる、…そんな魅力たっぷりのソ・ドンジェにどっぷりハマって、彼の行く末が“良い”のか“悪い”のか、是非見届けてほしい。
◆文=鳥居美保


