西日本に住む女性は数年前、4人目の子どもを産んだ後、経済的な事情で赤ちゃんポストに預けようと考えた。
だが、自宅の電気が止められ、ポストまでの交通費をまかなえなくなった。思い悩んだ末、母乳を染み込ませたタオルを顔にかけて窒息死させた。
今年3月、熊本市に続き、東京都内にも赤ちゃんポストが開設された。受刑者となった女性は今、こうした動きに何を思うのか。女性から届いた手紙の一部を紹介する。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●インスタで知った赤ちゃんポスト
──赤ちゃんポストの存在をどうやって知った?
赤ちゃんポストについては、インスタグラムのリールでスクロールしていて切り抜き動画を見て知りました。
──熊本の赤ちゃんポストがどんなものか知っていた?
あまりはっきりとは覚えていませんが、戸籍のない子、育てられない子をあずかって施設で育ててもらえる…という程度だったと思います。
私と暮らすよりは幸せで過ごせる場所という感じでした。
──赤ちゃんポストがどの範囲にあれば行けた?
残ったお金で... と考えると中国地方なら行けたと思います。
──東京で「いのちのバスケット」が開設されたが、どのように運用されてほしい?
利用する時に『ここまでよく頑張った』 『頼ってくれてありがとう』と勇気を出して行動したことをほめてあげてほしいです。
『なんで連れて来たの?』のような否定な言葉はかけてほしくないと思います。

●「生物学上の父親に何も責任はないのか」
──赤ちゃんポストに対しては、「育児放棄を助長する」「『子供を捨ててもいい』という誤解を与えてしまう」といった批判があるが、どう思う
理解しがたい人もいるでしょうから、批判はあるだろうなという感想です。批判はするけど、そういう人って解決案は出してくれないだろうし…。
ですが、赤ちゃんポストは孤独な母親にとって最終的な頼れる場所であると私は言いたいです。
孤立出産にしろ、病院で出産したにしろ、孤独な母親は少なくないと思います。
『母親なんだから』『母親だったら』ってよく言われます。
私も裁判中に言われました。でもその言葉は私は嫌いです。
妊娠は1人ではできません。生物学的父親は何も責任はないのかとすごく思います。
地元の友人に児相の人と合わない、自分なりに精一杯頑張っているのに児相の人に怒られるといった子がいました。
私自身、実家で長女・長男の育児中、親や旦那に色々責められました。口だけ出して手は出さないくせにという思いを当時の私は持っていました。
普通に仕事をしている、旦那又はパートナーがいて協力してくれる、両親が協力してくれるという環境にいる人は赤ちゃんポストは必要ありませんし、どちらかといえば批判する側の人だと思います。

友人に生活保護を受けながら1人で育児していた子が自宅に子ども(当時2才)1人置いて何日も帰ってこないということがありました。私が長女妊娠前に居候していた子の話です。
当時介護で働いていたので私が育児していました。日中は24時間の託児所へあずけたり、日勤であれば職場へ連れて行っていました。
その間、その子は一切連絡がとれませんでした。私が居候していなかったら… と今は思います。
1週間程で帰ってきましたが、その後子どもは施設に入りました。今は引き取り一緒に暮らしているそうです。
『赤ちゃんポストに子どもを捨てていい』ではなく『赤ちゃんポストに助けを求めていい』が正しいのではないかと私は考えます。
友人にそういった子がいたからこそ余計にそう私は思います。頼れる人がいないからです。

