●警察署に通報「典型的な詐欺ですね」
あれだけ真剣な話をしていた"キダ刑事"は、そこで突然、電話を切ってしまいました。
こちらから電話をかけ直して、もっと事件について詳しく聞きたいと思いましたが、発信元の電話番号が海外のものだったので、電話料金が怖くて断念しました。
会話はもちろん録音してあります。ただちに事件化はしないかもしれませんが、別の事件から余罪に発展することもあるだろうと思い、すぐに最寄りの警察署(こちらは本物です)に電話しました。
事情をすべて伝えると、対応した警察官は「典型的な詐欺ですね」と即答しました。
いわゆる「オレオレ詐欺」の対策によって詐欺が成功しないケースが増え、詐欺グループは最近、警察官を装う手口にシフトしているといいます。
遠方の警察に出向くよう電話で伝え「忙しいから難しい」と断ると、「あなたは容疑者の一人で、LINEで取り調べをする」と言って、LINEのIDを聞き出すそうです。詐欺師の目的は金をだまし取ることですので、LINEでは言葉巧みです。
たとえば、「マネーロンダリング事件の捜査なので、あなたの口座のお金を調べないといけないので、お金を振り込んでください。振り込まないと逮捕されます」と言ってくるそうです。
●警察官をかたる詐欺は特殊詐欺の4割近くに
警察官をかたる詐欺は、ロマンス詐欺やSNS型投資詐欺などと共に、「特殊詐欺」と呼ばれ、横行しています。
警察庁が10月2日に公表した統計によると、今年1月から8月末までの認知件数・被害額は前年同期比で大幅増加しています。すでに認知件数は1万7662件(前年同期比5255件増)、被害額は831億4000万円にのぼりました。
特に「警察官をかたる詐欺の被害」が顕著で、認知件数は6577件と、全体の37.2%を占めています。
こうしたことから、警察庁ではインターネット上に「特殊詐欺対策ページ」( https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/circumstances/)を開設し、詐欺の手口や対策、相談窓口を公開しています。不安になったらすぐに相談してみてください。
この記事を書くにあたり調べたところ、警察取材慣れしたマスメディアの記者たちにも、「警視庁捜査2課のヤマモトさん」や「警視庁捜査2課のヒノさん」、「警視庁捜査2課のマツオカさん」たちが電話をかけていたようです。
いずれも、すぐに見抜かれてしっかりと記事としてその手口が公開されています。同業者として、彼らの記事を読むと「詐欺電話の巧妙さ」がよくわかります。あなたの電話にも、もしかしたら、別の"捜査2課"がかけてくるかもしれません。

