神奈川県医師会が参加した子ども向けイベント「かながわMIRAIストリート」が大きな話題を呼んでいます。抽選で当たった参加者に本物の聴診器をプレゼント、白衣を着た記念撮影など、子どもたちが医療の世界を体験できるこのイベントに1500組の応募が殺到しました。さらに、夏休みのイベントとして映画「はたらく細胞」の上映会を開催し、18歳以下の参加者全員に聴診器をプレゼント。その背景には「18歳人口が半分になる時代」を見据えた、医療人材確保への強い危機感がありました。
医師のキャリアを生涯にわたってサポートする「かなドク」プロジェクト、DXで変わる医師会の業務改革など、2040年の医療を見据えた神奈川県医師会の挑戦について、鈴木紳一郎会長に詳しく聞きました。
子どもたちに医療の魅力を伝える「かながわMIRAIストリート」と映画「はたらく細胞」上映会
2025年5月に開催された「かながわMIRAIストリート」の開催と連動した映画「はたらく細胞」上映会は、想定を大きく上回る反響を呼びました。
「100組の募集に対して1500組の応募がありました。やっぱりみんな興味があるのですね。子どもたちを連れて、親が白衣を着させて、すごく喜んでくれました」
参加した子どもたちには、特別なプレゼントが用意されていました。
「来てくれた子どもたちに、本物の聴診器をプレゼントしました。看護師さんが使っているのと同じ、ちゃんと使えるものです。組み立てキットになっていて、親子で一緒に作れるのです」
この取り組みの背景には、将来の医療人材確保への危機感があります。
「18歳人口が半分になっても、医療人材がいれば医療は守れます。でも、このままいったら医療人材はいない、お金も出てこない。一度なくすと本当に戻らないのが社会インフラ、社会資源ですから」
神奈川県医師会は、映画「フロントライン」への後援をおこない、映画の公開前に神奈川県知事や厚生労働省などコロナに立ち向かった当時の担当者との座談会を開催し、医療従事者の苦悩を知ってもらう取り組みもあわせておこなっています。
「ダイヤモンドプリンセス号から始まるコロナとの闘いを描いた作品は、テレビでも5分ぐらい特集されました。こういう形で、子どもたちが医療に興味を持ってくれれば嬉しいです」
鈴木会長は、この戦略の狙いを説明します。
「ターゲットは子ども、そしてそこにいる若い親です。子どもが楽しそうに聴診器を持って歩いていると、それがまたほかのお客さんを呼ぶ。将来の医療人材を増やしていける土台になると考えています」
医師のキャリアを生涯支える「かなドク」プロジェクト
神奈川県医師会が運営する「かなドク」は、研修医や勤務医向けの情報提供から始まりましたが、その構想はさらに大きなものです。
「最終的には、神奈川県に住むすべてのドクターのサポートができるようにしたいですね。いろいろ情報を『かなドク』に集約して、このサイトさえ見れば、問題解決の糸口が見つかるようにしたいのです」
具体的なサービス内容について、鈴木会長は次のように説明します。
「子育て中の女性医師への支援、ファイナンスの知識提供、税金や教育費用の相談など。開業した人も病院に戻ってきてもいいし、病院で疲れたら開業の手伝いに行ってもいい。完全に分かれたままじゃなくて、最後はまた交わってもらいながら、医師として幸せな人生を送れるようにしたいですね」
特に注目すべきは、人材マッチング機能です。
「田舎では学校医が足りなくて困っています。一方で、子育て中の女性医師で週に何日か働きたい人もいる。このマッチングができれば、お互いのためになる。今はアクセスもいいから、横浜から足柄に行ったっていいじゃないですか」
最終的には、会員だけでなく非会員にも開放する計画です。
「最初は会員のためのサービスとして作るけど、最終的には会員じゃなくても利用できるようにする。それを見て『医師会って役に立つな』と思ってもらえれば、自然に会員になってもらえると思います」

