
岡部大が主演を務める木曜ドラマ23「よかれと思ってやったのに~男たちの『失敗学』裁判~」(毎週木曜夜11:00-11:30)が4月2日よりスタートし、早くも話題を集めている。このほど、主演の岡部にインタビューを敢行。前代未聞の「一人17役」に挑戦した本作への思いや、自身の「良かれと思ってやったのに」というエピソードなどを語ってもらった。
■「よかれと思って」に潜む無自覚な罪を裁く新感覚の法廷劇
本作は、男女の「すれ違い」の背景に迫った清田隆之による書籍『よかれと思ってやったのに男たちの「失敗学」入門』(双葉文庫)を原作に、岡部の主演でドラマ化。現代男性の「無自覚なエゴ」への断罪と再生を描く、新感覚の法廷ドラマだ。
テーマとなるのは、男性が良かれと思って行った行動が、女性や周囲に多大なストレスを与えてしまった事案の数々。男性の「善意」が「罪」に変わった瞬間、謎の法廷が幕を開け毎回誰もが心当たりのある「心の身だしなみの欠如」が罪として問われていく。
岡部が演じるのは、常に「よかれ」と空回りする主人公。第1話の「吉田卓也」から第10話の「余花礼介」に至るまで、毎回姿を変え設定を変えても、形を変えた偽りのプライドや一方的な善意によって失敗を繰り返していく男の姿を熱演する。
■“一人17役”という前代未聞の挑戦に「燃えましたね」
――改めまして、本作のオファーを頂いた際の心境をお聞かせください。
これまでは結構「いい人」の役をいただけることが多かったのですが、今回演じる役が最初からやらかして、ダメダメで、ちょっと印象が悪いというか(笑)、そういう感じのキャラクターで。今まで演じたことのない役柄でしたし、しかもそれが17人分というので、めちゃくちゃ挑戦だし、とてもやりがいありそうだなと思いました。
やっぱり「一人17役」と聞いた時に、ハナコの単独ライブでも1~2時間で10役くらいやっているので、「ぜひ挑戦させていただきたい」という気持ちで、燃えましたね。
――本作は男性の「無意識罪」が罪に問われていくという一風変わった法廷劇ですが、岡部さんご自身も「こういうことやってるな…」と感じられたり、共感してしまったことはありましたか。
ありました。さすがにここまでヤバくはないですが、やっぱりこういう要素は僕にもどこかしらあるなと思いましたし、「こういうところは気を付けなきゃいけないよな」と意識するようになりました。撮影中は(演じる中で)自分自身を戒めながらというか、アップデートしながら進めることができました。

――先ほどのお話にもありましたが、本作では毎回異なる人物を演じ、計17役を演じられたとのことですが、実際に演じてみていかがでしたか。
最初は毎話毎話「いるよな、こういう人」みたいな絶妙なラインを狙った方がいいのかなと思っていたんですが、現場に入ったら楽しくなっちゃって、監督と一緒になってどんどんやりすぎてしまいました(笑)。
結構ぶっ飛んだキャラばかりなのですが、逆に皆さんが笑って見てもらえるかなと思いますし、1話ごとにそれぞれキャラ立ちしたのかなと思います。
――特に演じていて面白かったとか、印象的だったキャラクターはありましたか。
第5話の主人公であるモリモリ(守男)というキャラクターは「束縛する男」で、最初から「ヤバそうだなコイツ」と思いながら演じてみたのですが、案の定ヤバかったです(笑)。あと、現場が始まって意外だったのは、第8話の和彦というヒゲとメガネのキャラクターで。
台本を読んだ時は「でもいるよな、こういうすぐ勘違いしちゃうタイプの痛い男」と思って。「この子、僕に気あるんじゃないか?」と勘違いしちゃう、ちょっと笑える痛いヤツくらいのイメージだったんですが、いざ始まってみたらめちゃくちゃサイコパスみたいな(笑)。ちょっと猟奇的な、狂気じみたキャラクターにあれよあれよとなっていきました。

――そうした極端なキャラクターを演じていると、だんだんコント的な感じになっていくのでしょうか。
ト書き通りに演じたつもりだったんですが、なぜか静寂の中に狂気が含まれてきたというか(笑)。でも、衣装合わせの段階でヒゲをつけて、タートルネックでメガネをかけた時点で、「コイツなんかちょっとヤバそうだな」みたいな話にはなっていたんです。演じながら和彦の日常生活に入ってみたら、ただの「痛いヤツ」じゃなくて本当に狂気じみていったので、印象に残っています。
■松尾スズキとの共演に「初日の胸の高鳴りは生涯忘れることはない」
――彼女や妻から三くだり半を突きつけられるまでの日常シーンと、法廷シーンのコントラストも印象的でした。本作の見どころである法廷シーンはいかがでしたか。
法廷シーンは松尾スズキさんが裁判長でいらっしゃって、(日高ボブ美演じる)検事と(富川一人演じる)弁護のお二人も毎回いらっしゃるんですが、皆さん本当にキャラクター溢れるというか。
その場その場で「今回は弁護が強いな」とか、「今回は検事が強いな」とか、「今回は裁判長がだいぶ遊んでいるな」とか、それぞれの持ち味を活かしたソロプレーみたいな局面でカマしてくださるので、そこにみんな、「あ、そう来たか」みたいな感じで合わせて動いていく感じがありました。
法廷シーンは傍聴人や黒服の皆さんも含めて普段舞台で活躍されている方々ばかりなので、毎話毎話で見せる「グルーヴ感」と言いますか、即興劇の「ライブ感」と言いますか、舞台で育まれてきた発想力と瞬発力みたいなものをひしひしと感じて、毎回毎回がすごく楽しかったです。
――今お話もありましたが、松尾スズキさんを筆頭に、日高ボブ美さん、富川一人さんなどレギュラーキャストの皆さんとは現場でどんな話をされていましたか。
やっぱりその回ごとに、「今回のコイツはやばいね」とか、「今回やってみたら、この前のヤツはヤバいと思ってたけど、意外とここは良かったよね」とか、主人公のキャラクターについて話すことが多いですね。
でも、そういう話をしていても男性側と女性側で(反応が)全然違うんです。例えば第3話に登場する翔真というキャラクターについて、男性側は「意外と翔真はいいヤツだったよね」と思っていたんですが、メークさんやボブ美さんなど女性側からは「マジで翔真は嫌でした」みたいな感想があって。
「やっぱり男性と女性で捉え方は違うんだな、だからこういうところですり合わせが必要なんだろうな」みたいなことを実感しながら演じていましたし、演じた後の感想戦も盛り上がっていました。

――裁判長役の松尾スズキさんは、中盤でまさかの事実が明らかになり、その後はちょっと特殊な形で主人公と関わっていくことになりますが、松尾さんとのシーンはいかがでしたでしょうか。
やっぱり僕はもともと宮藤官九郎さんの作品が学生の時から大好きで。「木更津キャッツアイ」(2002年、TBS系)とか、「タイガー&ドラゴン」(2005年、TBS系)とか、「池袋ウエストゲートパーク」(2000年、TBS系)とかを見ていました。
そこから学生時代、「大人計画っていう劇団があるんだ」と知って。劇団の顔ぶれが「この人が出てきたら面白いな」と思う人たちばかりでしたし、そんな劇団を立ち上げたのが松尾スズキさんって人なんだと思って、漠然とした憧れの存在でした。そんな方と二人きりでお芝居することができて、初日の胸の高鳴りはもう、生涯忘れることはないと思います。
――松尾さんからかけてもらった言葉で印象的だったことはありますか。
松尾さんからは「昭和の俳優みたいな動きができるよね」みたいなお話をしていただいて。「スタミナあるね」とか「声でかいね」とか「喉強いね」とか、フィジカルなことを結構褒めてもらえるようなことが多かったので嬉しかったです。目線も結構独特なんですが、「そこを切り取るんだ」っていうのが面白かったです。

■暴走気味の演技を締めてくれたヒロインたちの「頼もしさ」
――罰の執行シーンも、拝見していて「本当に拷問だな」と思ってしまいました(笑)。そのあたりも見どころの一つとなりそうですが、演じられていていかがでしたか。
あそこのシーンは本当にライブ感と言いますか、裁判中のシリアスなムードから刑の執行になるとまたガラッと雰囲気が変わって、あの場所ならではの毎回バラエティーに富んだというか、バラエティー番組の体当たり企画みたいな刑の執行があるんです。
監督さんは3人いたんですが、その撮り方にもそれぞれの色があって。ライブ感を重視して手持ちカメラでガーっと行きましょうみたいな時もあれば、何回もインサートの映像をこだわって撮影する時もあって、そこも新鮮でした。個人的には、作品のみずみずしいライブ感が皆さんに伝わったらいいなと思っています。
――本作では毎回異なる女優さんがヒロインとして登場されますが、共演されて特に印象的だった方やシーンがありましたら教えてください。
やっぱり毎話毎話、共演した女優さん全員がカメラが止まった瞬間に「ヤバいなコイツ」みたいな感想を仰っていて(笑)。そうなってくると僕も「やばいな」って言わせたくて、「いかにヤバいと思わせられるか」を意識してやっていたところもありました。
「ヤバい」って言ってもらえたら、「うまく演じられているな」と手ごたえを感じるというか。いかに呆れられるかが大事だなと思いつつ。でも、毎回僕が結構やり過ぎてしまう部分もあったので、そこを各話のヒロインの方々にぐっと締めていただきました。
前段で僕がちょっとやり過ぎていて不安だった部分も、裁判シーンが始まってからヒロインの皆さんが真剣に訴える姿で物語が引き締まるので、毎話毎話頼もしく感じていました。ただただコメディーなだけではなくて、ちゃんと「こういうところを直さなきゃな」と視聴者の皆さんにも思ってもらえるような作品になったので、すごく助けられました。

■夫婦間での「あれ買っておいたよ」が思わぬ火種に?
――本作のタイトルに絡めまして、ご自身の中で「良かれと思ってやったのに」裏目に出てしまったというエピソードがありましたら教えてください。
家庭では、「これをやっておいたら『おっ』と思ってもらえるかな」みたいなちょっとした家事があるんですが、この前も洗剤とかのストックが足りていなかったので、買い足しといたら気が利いた感じになるかなと思って買い足したんです。それで妻に「あれ買っておいたよ」って言ったら、「え、じゃあこれも買って欲しかったのに」って言われてしまって(笑)。
ドラマでも第1話でサプライズをやりたがる男が出てきましたが、やっぱりサプライズ系って、デートに限らず本当に全部気を回せる人しかやっちゃいけないんじゃないかなって思いました。「ほうれんそうをしない男」も後々出てきますが、男女の関係も仕事の関係も、そういうコミュニケーションが本当に大事なんだなと。
「良かれと思って先にやっちゃう」みたいなのは、基本的に上手くいかないんじゃないかなと。なので、「良かれ」と思ったらまず相談してみる、コミュニケーションを取ってみることが大事なんだなと思います。
ちなみに、僕はその一件があったので、この作品が始まる前からちゃんとやっていました(笑)。必ず「これからドラッグストアに寄ろうと思うんですが、何か買っておいた方がいいものありますか?」って電話で相談して、お伺いを立てるという。ちゃんとアップデートしました。

――ドラマの中では「無意識罪」という形で主人公が断罪されていきますが、例えばハナコの相方である秋山さんや菊田さんに対して「あれは直してほしかったな」といったことなどはありますか。
秋山は話し方や言い方などで本当に気を使うタイプの人間なのですが、あまりにも下手に出過ぎていて、「これは逆に気使うよ」って思う時ありますね(笑)。良かれと思ってやってるんだろうけど、かしこまり過ぎて逆に真意が伝わってないんじゃないかなとか、もうちょっとズバッて言った方がいいのにと思う時はありますね。
――最後に、本作をご覧になる視聴者の皆さんに向けて、見どころなども含めてメッセージをいただければと思います。
男性であれば、どこかしら「自分もこういうとこあるな」と思える要素がある作品ですし、女性も(主人公の言動を見て)「いるよね、こういう人」とか、「そうそうそう!」って思いながら楽しんでもらえる作品だと思います。見ていて深刻にならずにというか、嫌な気持ちにならずにカラッと笑える作品になっています。
あとは、男女関係なく、「こういうことって大事だよな」と気づける作品だと思うので、笑いながらも“心の身だしなみ”をちょっと整えていただければ。一人じゃなくても友達や家族など、いろんな人と一緒にワイワイ言いながら見るのも楽しめる作品になっていると思うので、ぜひみんなで楽しんでもらえればと思います。


