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「すごく悲しい」自分の気持ちを打ち明けた息子にハーバード大学精神科医の母親がかけた言葉|内田舞

「すごく悲しい」自分の気持ちを打ち明けた息子にハーバード大学精神科医の母親がかけた言葉|内田舞

男女間の不正義は、どこから生まれるのでしょうか? 3月25日に発売されたハーバード大学医師、内田舞氏による『ジェンダー・ジャスティス 社会の無意識が生み出す性と権力の構造』は、社会に潜む偏見、差別のメカニズムをあぶりだします。「第三章 なぜ悪意なく『加害者』が生まれるのか」は、「男らしさ」をめぐる問題。一部をご紹介します。

自分の感情を受け止めることの効果

心は無理をすればするほど、隠そうとしている負のエネルギーが別の形で出てきてしまいます。感じてはならない「『弱い』感情」がこみ上げたときには、それをジョーク、あるいは怒りで隠したり、自分を大きく見せようと無理したりすることで、実は心に大きな負担をかけてしまうこともあります。

攻撃性やパニック発作、また内科的な原因が見つからない身体症状は、正直に向き合っていない感情が表面化したものであることも多く、逆に、感情を受け止めて咀嚼することで、今までとは違った内的な力を築くこともできます。

私は、3人の息子たちには「男の子も泣いていい。何かを怖いと感じてもいい。悩んでいることを打ち明けてもいい。苦しいときにはセラピーに助けを求めてもいい。お互いをやさしくサポートする友情を大切にしていい。権力や仕事の成功だけが男性の強さを表すのではない」と、教えていきたいと思っています。

長男についてはこんなエピソードがあります。アメリカでは障害物競走の「サスケ」が野球やサッカーと同じようにスポーツ競技として流行っており、長男と次男が熱心に取り組んでいました。

あるサスケの大会で、長男がちょっとしたミスで失敗してしまいました。その後、息子は悲しみに耐えようとしていたのか、少しイライラしていました。帰路の車の中で、息子は「すごく悲しいんだ」と胸のうちを明かしました。私は運転を止め、息子の目を見て次のように言いました。

「今日、試合に一生懸命取り組んでいてすごくがんばっている姿に勇気を感じたけれども、それ以上に、何よりも今『悲しい』という気持ちを声にしてくれたことにもっと大きな勇気を感じたよ。失敗して悲しい、悔しいときに、その気持ちを感じるのはつらいから、つい『別に大した大会じゃないし』『こんなの何でもないし』とごまかしたり、誰かのせいにしたりして、自分の悲しい気持ちに向き合わずに流してしまおうとしたくなるものだけど、実は『悲しい』『悔しい』という気持ちをそのまま感じて、そのまま言葉にするのはとても大切なこと。そこに向き合うことはすごく勇気がいることなんだよ」

その言葉を聞いて、息子は納得してすっきりしたようで、その後は会話が弾みました。

自分の子どもが「悲しい」と言ったとき、親としても子どもが悲しんでいるところを見ることがつらいあまりに、「でも、いいところまで行けたじゃない」「次があるじゃない」と言ってしまいがちです。もちろんそうした励ましも間違いではありませんが、「悲しんでいい」と伝えることも大切だと私は思うのです。

子どもも自分が「悲しい」という気持ちを表現したときに、しっかりと受け止めてもらえるという安心感を持つことで、また前進しようという勇気を出せるようにも思います。
 

配信元: 幻冬舎plus

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