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遠くへ行きたい ロケハン明石海峡編|相場英雄

遠くへ行きたい ロケハン明石海峡編|相場英雄

使用機材<RicohGR3,FujifilmXT30>

ロケハン……ロケーション・ハンティングの略である。

通常は映像作品の下見という意味合いで使われる言葉だが、私は頻繁に自身の仕事に用いている。

私が手がけた作品の大半で、主人公やサブキャラたちが地方に赴く、あるいはその土地にしっかりと根ざしている人物が登場する。

 

もちろん創り手が行ったことのない土地も物語には登場する。そんなとき、作者はどうするか。そう、下見に行き、実際に街を歩き、その土地の物を食し、地元民とじっくり話をする。読者を旅に連れていく、これが筆者としての矜持なのだ。

珍しく真面目な話で原稿を始めてしまったが、これは偽らざる私の本音だ。そしてスケジュールの合間を縫って、ロケハンに出たので、そのときの様子を記しておきたい。

今回訪れたのは、兵庫県だ。某誌で連載中の長編には、関西出身のアクの強い女性キャラクターが登場する。

過日、プロットを練っていたとき、彼女が悪巧みをするシーンを思いついた。だが、著者自身は彼女が悪事を画策する舞台を訪れたことがないことに気づき、急遽自分で車を運転し、出かけたという次第なのだ。

訪れたのは、神戸市の西隣に位置する明石市。そしてその先にある淡路島だ。なぜこの二つの土地だったのか。答えは〈海峡〉というキーワードだ。

ミステリーやエンタメ作品を描く者として、〈海峡〉は非常に魅力的な存在だ。海を挟んで、二つの土地がある。似ているようで違う土地と人。創り手として、海峡という存在に惹かれてしまうのだ(個人的に水上勉作の『飢餓海峡』が大好き)。

思い立ったが吉日。深夜に東京を発ち、東名、新東名、新名神を経て明石に到着したのはちょうど昼前だった。

高台にある高速のインターから坂を下り、駅や繁華街が密集する港のエリアへ。一番の目的地は明石名物の〈魚の棚〉。現地の人たちは愛着を込めて〈うおんたな〉と呼ぶ商店街だ。

新鮮な魚介を扱う鮮魚店が多く、店先には〈ひる網〉という札があった。聞けば、朝獲れの海産物が昼までに店頭に並ぶのだという。

明石・魚の棚商店街。地元民も普段使いするお買い物ストリート。活気がありまくり。

魚の棚、鮮魚店の店先。まだ動いているタコちゃん多数。絶対うまいやつ!

明石のタコをふんだんに使った練り物(揚げたて)。なんたる贅沢。タコの風味が強烈すぎる。

明石名物、炭焼きのアナゴ重。フッカフカで美味。追いダレで昇天。

あれもこれも食べたい(ついでにビールも=ノンアルで我慢しました)。迷った挙句入ったのが、明石名物の穴子専門店。優しいお店のスタッフさんたちとの会話も弾み、明石を後にした。

次に向かったのが、淡路島。タマネギの名産地、昭和の名優渡哲也・渡瀬恒彦兄弟の故郷という以外、全く知らない島だ。晴天の下、明石大橋を駆け抜ける。初めての海峡越えに童心に帰ってはしゃぐ(写真参照)。

明石大橋をバックにはしゃぐ58歳おじさん。橋の向こう側は明石、神戸。大変美しい橋にご満悦。

淡路島の仮屋漁港。強烈な潮の香り、漁港マニア垂涎の景色。

漁港にはなぜかネコが似合うのだ。

漁港には細い路地と急勾配の坂持ちが似合う。演歌のフレーズが生まれそう。

目指すは、地元の漁師宿。淡路は最近リゾート化が進んでいるようだが、全く関心のない私は、トイレ、風呂が共同の民宿をチョイスした。初めて訪れる宿だったが、大当たり。新鮮な魚介をアテに、地元の話をたっぷり聞くことができた。

漁師民宿の夕食。ご主人が獲ったヒラメとシマアジが絶品。これだから民宿旅はたまらない。

これぞ民宿のシルエット。裏側には漁具がたくさん。

現役の魚網たち。この漁師民宿、絶対リピートするもんね。

そして驚いたのが、昔ながらの漁師町の雰囲気だった。細い路地、急勾配の坂道、そして漁船が佇む港の光景にしばし言葉を忘れ、見入ってしまった。

港町なら、湘南やら伊豆でもいいんじゃないのか……そんな声が聞こえてきそうだが、物書きという悲しい職業は、常に遠くへ行きたい、知らない街を歩いてみたいという衝動を抱えているのだ(永六輔さん、ごめんなさい=昭和世代ならこのボケがわかるはず)。

配信元: 幻冬舎plus

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