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声かけと手の温もり|佐津川愛美

声かけと手の温もり|佐津川愛美

朝、マンションのエントランスで、お掃除をしてくれているおばさまに会った。

「おはようございます〜いつもありがとうございます!」

そう声をかけると、おばさまは顔をあげて、「はーい、いってらっしゃーい!!」ととびきり明るく返してくれた。その一言で、一瞬で、心があったかくなる。

 

私の行動時間と合わないのか、なかなか会えないけれど、会うと必ず明るく声をかけてくれる。そのおばさまと挨拶出来た日は、とても気分がいい。明るさって大切だなぁ。

外に出ると、どこか街の空気が軽やかだった。

新しいスーツを着た人たちや、胸に花をつけた学生たちの姿が目に入る。あら、新年度だわ。

新しいスタートをきる人がたくさん居るんだなぁ。と思いながら、私は人間ドックへ向かった。

クリニックが入っているオフィスビルも、今日はなんだか賑やかだ。

基本プランにあれこれ追加して順番に検査を受けていく。

楽しみにしていた胃カメラ。

鼻からが楽と聞いていたけれど、前回は鼻が小さいと言われ、口からに変更になったことを思い出しながら、なんとなくもう一度だけ試してみることにした。

すると、意外にも、通った。苦しかったけれど。

そこから、私の「胃の中の大冒険」が始まる。カメラはゆっくりと、しかし確実に奥へと進んでいく。モニターに映し出される私の体の中。うわーピンクだわーとか思いながら自分で自分の体の中を見ていると、頑張ってくれてるんだなぁ〜としみじみ感じる。

空気が送り込まれ、内側から膨らむ感覚。くるしい。逃げたい。けれど逃げられない。

「唾は我慢しないで、出してくださいねー」そう言われる。ただ、流れるままにするしかない。

そのとき、ふと思う。私は、なんて無力なんだろうと。

普段は、自分で選んで生きているつもりでいるのに、こうして身体を預けてしまえば、私はちっぽけでしかない。何もできない。抗うこともできない。その事実を、こんなにもはっきりと突きつけられる瞬間があるのかと、可笑しくもなる。

そのときだった。背中に、そっと手が触れた。

看護師のおばさまが、ゆっくりと、一定のリズムで背中を撫でてくれた。

ただそれだけなのに、不思議なくらい、苦しさが和らいでいく。

「大丈夫」と言葉にされなくても、確かに伝わってくる。「もう少しですよ〜呼吸上手ですよ〜」

人の手って、人の声って、こんなにも力があるのかと思う。もし、あの手がなかったら、私は途中で心が折れていたかもしれない。

 

その後、今日わかる範囲の検査結果を言い渡される。シャキッと凛としたかっこいいおばさま先生。

「基本的にどの数値も大丈夫です。でもBMI値だけ低いからこれ以上痩せないように気をつけてくださいね。ちょっと痩せすぎってことですね。」

先月のプロデュース業が忙しすぎて、撮影ワークショップ前の準備期間、気付けば1週間で3キロ痩せていた。昨年からなかなか痩せなかったのに、3キロも減って嬉しい!ラッキー!!と思っていたけれど、よくなかった模様。

「お仕事頑張ってらっしゃるんですね。でも、体のこともちゃんとみてあげて、労わってあげましょうね。」

うっ、、ちょっ、、泣

 

言葉を届けること。触れること。寄り添うこと。

 

朝、明るく送り出してくれたお掃除のおばさま。

検査室で背中を撫でてくれた看護師さん。

そして、体と心を労わってくれた先生。

この日、私はおばさまたちに、救われた。

相手はただ、仕事をしただけかもしれない。それでも確実に私には「優しさ」だった。確実に、相手を思いやる心があったように感じる。

大げさではなく、人は言葉で支えられ、手のぬくもりに助けられるのだと思う。名前も知らない誰かの一言や、そっと触れてくれる手のやさしさの中に、静かに静かに潜んでいる。

新しい季節の入口で、誰かをあんなふうに励ませる人になりたいと思った。当たり前にやってのけるおばさまたちに、憧れを持ち続けていこう。

【喜】うーちゃんがとっても大きく成長している!
感動しちゃう。

配信元: 幻冬舎plus

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