900件以上のコメントから見えたもの
料理研究家リュウジ氏のX(旧ツイッター)への投稿が、大きな議論を巻き起こしています。その内容を取り上げたLASISAの記事「『あ、片親パンね』心ない一言に料理研究家・リュウジ氏怒りあらわ…!」(2025年10月6日午前配信)に対しても、数時間で900件以上のYahoo!コメントが寄せられました。ネット上ではさまざまな意見が交わされ、言葉の使い方や家庭環境についての意見が活発に交わされています。
LASISAの記事では、リュウジ氏がXに投稿した、子ども時代に親しんだ「砂糖がかかった大きなパンとチョコ入りの棒パン」の思い出を語った際、会話の相手から「あ、片親パンね」と言われた体験を紹介。これは、安価で量が多く、調理の手間が掛からない菓子パンを指すネットスラングで、家庭環境や経済状況を揶揄(やゆ)する差別的なニュアンスが色濃く含まれています。自身もひとり親家庭で育ったリュウジ氏はこの言葉に怒りを表明し、当該の投稿は3万5000件を超える「いいね」を集めたというものです。
Yahoo!ニュースのコメント欄には、「片親パン」という言葉の危険性や言葉の使い方に対する懸念が多く寄せられました。「少しでも想像力を働かせれば決して言おうと思わない、あまりに心ない言葉」「相手を傷付けたり不快にさせたりするかもしれない言葉を平気で言える人の方が問題」「この手の不適切な表現はたくさんあって、テレビでは放送禁止用語として使われないけど日常会話では特に悪気なく使われることがある」と、この差別的な言葉が持つ危険性に触れる意見や、「『悪気がない』というのは、言う/やる側の主観でしかなくて相手への配慮が一切ない。悪意がないフリをしているだけもこともあり得る」という指摘もあり、言葉の使い方に対する自省を促す声も上がっています。
さらに、必ずしもひとり親家庭だけがこれらのパンを食べているわけではないとの意見も多く見られました。「うちは両親そろってるけど食べさせてる」「共働き夫婦にだって時間がないから、パンで朝を済ませることは多い」など、ひとり親家庭に限らず多くの家庭でこうしたパンが食べられている実情があらためて明らかになりました。
また、「おいしくてほどよくおなかいっぱいになって、下校後に疲れてる状態でも食べると体力復活して“習い事に行くモード”になるので、大変ありがたいパン」という声もあり、こうした食品の価値を評価する意見も見られました。
加えて、「片親パン」という言葉自体を知らなかったという声も少なくありませんでした。あるユーザーは「コメント欄を見ても知らなかった人が多いようで、誰でも聞いたことのある一般的な言葉にはなっていないところにまだ救いを感じます」と述べていました。
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リュウジ氏の投稿をきっかけに浮き彫りになったのは、言葉の持つネガティブな力と責任、そして家庭環境の多様性に対する理解の必要性です。ある読者は「リュウジさんの投稿への反応を見ていると、両親のいる家庭でこれを食べて育った人は(菓子パンに対して)何もネガティブな感情を持っていないし、シングル家庭でも『これのおかげでおなかが満たされていた』と感謝している人もいる」と、受け止め方は人それぞれであり家庭環境だけではくくれないと分析しています。
この議論は単なる言葉遣いの問題を超え、私たちが他者の経験や感情にどう向き合うかという、より深い社会的課題を投げ掛けているとも言えそうです。
(LASISA編集部)

