
駅の改札でICカードが反応せず、苛立ちを露わにする乗客。原因は「他社路線の出場情報が残っていること」だった。親切に説明する駅員に対し、乗客は「同じ鉄道だろ!ここで処理しろ!」と理不尽な怒声を浴びせる。このエピソードは、SNSやブログで注目を集めているのが、駅員経験を持つザバック(@theback_blog)さんの実録漫画『100日後にやめる契約駅員さん』だ。
主人公のペン助が直面するこの光景は、鉄道現場では「日常茶飯事」だという。他社の処理はシステム上できないと丁寧に伝えても、聞き入れない乗客。ペン助は心の中で、『吉野家の牛丼の支払いをすき家でできるかよ?』と毒づく。会社が違えばルールもシステムも違う。そんな当たり前のことが通用しない現場の苦悩を、ザバックさんはユニークな動物のキャラクターを通してユーモラスに描き出している。
■「僕らに怒っても仕方ない」。駅員経験者だからこそ語れる、クレーム対応の虚しさ



ザバックさんは自身の駅員時代を振り返り、クレーム対応について「正直なところ、僕らに怒っても仕方ないんだよなあと思う。共感してくれる駅員さんも多いのではないか」と語る。
現場の駅員にはどうすることもできない社内規定やシステムの不備に対し、感情をぶつけられる。そんな理不尽な状況を、漫画として昇華させることで、読者には「駅員の日常」を垣間見せ、同業者には「あるある」という救いを与えている。ICカードの出場処理忘れは、地下鉄など複数の路線を乗り継ぐ際に発生しやすいトラブルだが、スムーズな解決には「対象の鉄道会社へ申告する」のが唯一の正解だ。
■「1時間半前に出勤」は当たり前? 鉄道業界の驚くべき特殊ルール
これまで複数の鉄道会社を経験してきたザバックさん。業界特有のルールについて尋ねると、驚きの実態を明かしてくれた。「安全第一や時間厳守は当然ですが、衝撃的だったのは『1時間半前の出勤』。これは特定の会社のルールで、すべてがそうではありませんが、さすがに早すぎだろと思いました(笑)」と笑う。
豊富な現場経験に裏打ちされたザバックさんの作品には、単なるフィクションにはない重みと説得力が宿っている。SNSやブログでは、本作以外にも駅員の知られざる苦労や喜びを描いた作品が多数公開されている。私たちが普段何気なく利用している駅の裏側で、ペン助のような駅員たちが今日も「心の中の例え話」を武器に奮闘しているのかもしれない。
取材協力:ザバック(@theback_blog)
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