皆さんは血圧を気にしたことはありますか?血圧が高めといわれたり、高血圧を予防する食品の宣伝が気になったりしたことはありますか?
高血圧を予防することはできるのでしょうか。高血圧を予防するためには、そもそも高血圧がどの程度の血圧のことか、どのように血圧を低下させるのかを知る必要があります。この記事では高血圧の基準と健康被害、予防する手段を解説します。

監修医師:
佐藤 浩樹(医師)
北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。
高血圧の概要とリスク

高血圧の基準値を教えてください
高血圧の基準値として、診断基準と治療の基準値があります。
診断基準のなかでも、病院や検診で測定する血圧(診察室血圧)と家庭で測定する血圧(診察室外血圧)で基準が異なります。高血圧と診断される基準は 、診察室血圧で140/90 mmHg 以上、家庭血圧で135/85 mmHg 以上です。
治療の基準値は、2025年に新しく設定された目標値があります。診察室での目標血圧は130/80 mmHg 未満、家庭血圧の目標:125/75 mmHg 未満です。
参照:高血圧管理・治療ガイドライン2025
高血圧が持続するとどのような健康被害が生じますか?
高血圧が続くと血管や臓器に負担がかかり、さまざまな病気を引き起こします。血圧が高い状態が長く続くと、血管の壁が傷み、動脈硬化が進みます。その結果、血流により重要な機能を担っている脳や心臓、腎臓などに障害が起こりやすいのです。
脳で起こる脳血管障害で代表的なものは、脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血です。突然倒れて言葉が出なくなる、身体が動かなくなるなどの症状が出現します。命に関わったり、後遺症が残ったりする危険がある病気です。
心臓では、心臓に血流を送る血管(冠動脈)に障害が起こり、やがて引き起こされる病気が心筋梗塞や狭心症などです。また、血圧が高くなることにより負荷が高まり、心臓の筋肉が厚くなります。心臓の働きが弱まり、息切れやむくみを伴う心不全を引き起こすことがあります。
腎臓も高血圧の影響を受けやすい臓器です。血圧が高い状態が続くと腎臓の働きが少しずつ落ち、慢性腎臓病や人工透析が必要な腎不全につながることがあります。
大きな血管におこる影響としてあげられるのが、動脈瘤や大動脈解離などの病気です。いずれも深刻な病気で、突然の命の危険を伴います。
目の血管も高血圧の影響を受ける臓器の一つです。網膜の血管が傷むと高血圧性網膜症となり、視力の低下や失明につながることがあります。
さらに近年、高血圧が長く続くと脳の小さな血管が傷み、物忘れや認知症のリスクを高める可能性があるというデータが報告されています。このように高血圧は自覚症状がほとんどなくても、放置するとさまざまな重大な病気の原因となります。
参照:『高血圧治療ガイドライン 2019(JSH2019)』(日本高血圧学会)
食生活の改善による高血圧の予防効果

高血圧は食生活の改善で予防可能ですか?
はい、可能です。特に日本では、食塩の過剰摂取により高血圧を引き起こす方が多いのです。食塩の摂取を制限することで高血圧となる確率を減少させることが可能です。すでに血圧が高めの方でも、食生活を改善することで血圧が下がり、薬を減らしたり将来の合併症を防いだりする効果が期待できます。
高血圧の人が避けたい食べ物や調理法、食べ方を教えてください
血圧を上げる原因として重要なのは食塩の摂りすぎです。漬物、味噌汁、ラーメン、加工食品(ハムやソーセージ、インスタント食品など)は特に塩分が多いので注意が必要です。調理の際は濃い味付けを避け、しょうゆやソースをかけすぎないようにしましょう。また外食や惣菜も塩分が多いので、汁物を残すなど工夫が大切です。ほかに、脂肪の摂りすぎを避けるほうがよいです。
高血圧の人が積極的に摂りたい食べ物や料理を教えてください
野菜や果物にはカリウムが多く含まれており、体内の余分な塩分の排泄をうながすため、血圧を下げる助けになります。食物繊維を積極的に摂取することがすすめられるため、海藻やきのこ、大豆製品もおすすめです。また、魚に含まれる良質な脂肪(EPAやDHA)は血管を健康に保ちます。肉を食べるときも脂身の少ない部位を選ぶとよいでしょう。料理の味付けにはレモンや酢、香辛料やだしを使って、塩分を控えながらもおいしく食べられる工夫が大切です。近年、多価不飽和脂肪酸(特にオメガ3)の摂取をすすめる研究もあります。
参照:『2013 AHA/ACC Guideline on Lifestyle Management to Reduce Cardiovascular Risk』(American Heart Association)

