膵臓がんの生存率は病期によって大きく異なり、早期発見の重要性を物語っています。I期では5年生存率が40〜50%程度である一方、IV期では1〜2%程度と厳しい現状があります。しかし、近年の治療法の進歩により、従来よりも長期間にわたって病気をコントロールできる患者さんが増加しており、治療成績は着実に向上しています。

監修医師:
高木 大歩(医師)
2021年、杏林大学医学部医学科卒業。
慶應義塾大学病院で初期研修を修了後、川崎市立川崎病院 総合内科、北里研究所病院 消化器内科を経て2025年より慶應義塾大学病院 消化器内科に勤務。
【所属学会】
日本内科学会/日本消化器病学会/日本消化器内視鏡学会/日本肝臓学会
膵臓がんの病期別生存率の現状
膵臓がんの生存率は病期によって大きく異なり、早期発見の重要性を示しています。統計データを基に、病期別の生存率について詳しく解説します。
早期膵臓がん(I期・II期)の生存率
膵臓がんI期では、がんが膵臓内にとどまっており、リンパ節や周囲臓器への転移がない状態です。この段階で発見された場合の5年生存率は約40%から50%程度とされています。膵臓がんの中では予後が良好な段階であり、根治的な治療が可能です。
I期の膵臓がんに対する標準治療は外科手術です。膵頭十二指腸切除術や膵尾部切除術などの手術により、がんを完全に切除することが可能な場合があります。手術後の補助化学療法により、さらなる生存率の向上が期待されます。
II期では、がんが膵臓周囲のリンパ節に転移している状態です。この段階の5年生存率は約20%から30%程度です。II期でも手術による根治的治療が可能な場合があり、手術とその後の化学療法の組み合わせにより、長期生存を目指すことができます。
進行膵臓がん(III期・IV期)の生存率
III期の膵臓がんは局所進行例と呼ばれ、がんが膵臓周囲の主要血管に浸潤している状態です。この段階では手術による完全切除が困難な場合が多く、5年生存率は約3%〜5%程度にとどまります。しかし、近年の治療法の進歩により、一部の患者さんでは長期生存が可能になってきています。
III期に対する治療では、化学放射線療法や全身化学療法が主体となります。これらの治療により腫瘍の縮小が得られた場合、二次的に手術が可能になることもあります。このような集学的治療により、予後の改善が期待されています。
IV期は遠隔転移を有する進行がんの状態で、5年生存率は約1%〜2%程度と厳しい数値となっています。しかし、新しい抗がん剤の開発や免疫療法の導入により、従来よりも長期間にわたって病気をコントロールできる患者さんが増えてきています。
まとめ
膵臓がんI期の5年生存率は40〜50%、II期は20〜30%、III期は3〜5%、IV期は1〜2%となっています。早期発見により根治的治療が可能となり、予後は大幅に改善されます。進行がんでも新しい治療法の導入により、生存期間の延長が期待できるため、病期にかかわらず希望を持って治療に取り組むことが大切です。
参考文献
膵臓がん(国立がん研究センター がん情報サービス)
がん対策推進基本計画(厚生労働省)

