
コミックの映像化や、小説のコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、月刊!スピリッツに読切掲載された、秋山視点さんが描く『卒業式には行かなかった。』をピックアップ。
秋山視点さんが3月9日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、4,000件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、秋山視点さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
■卒業式に行かなかった二人

高校3年生の神山とクラスメイトの秋田は、卒業式当日、式に参加しなかった。二人はとある公園でお互いが式に参列していないことを知り、他愛のない会話を始める。
神山は、毎年当たり前のように咲く桜を、写真部で作品にすることに何の意味があるのだろうか、という疑問を持ってから全ての事が馬鹿馬鹿しく感じていたと話す。
秋田はそんな神山に「もっと外側に触れろ」と言い、さらに小説の一節を引用し、「どんな風に世界を見るかで、こんなにも面白く変えられんだ」と言う。
秋田の言葉により、神山の心の中で変化が起き、
「あたしの想像一つで あたしの世界が変えられるんなら、どんな平凡な日々も後悔も、認めていける気がする」
と言い…。
作品を読んだ読者からは、「文学的」「良い作品でした」「作中に出てくる作家たちへの愛もすごい伝わる」など、反響の声が多く寄せられている。
■作者・秋山視点さん「『漫画を描く』という意識を持たないように…」

――『卒業式には行かなかった。』は、どのようにして生まれた作品ですか?きっかけや理由などをお教えください。
他誌で描いた短編があまりにも自分から乖離しており、諸般の反省があったので、制作に至りました。
当時は「そろそろ自分と無関係の物語とキャラクターを用意し、想像だけで成立させてみせる!」と意気込んでいたのですが、その為の方法論を確立出来ないまま付け焼き刃で完成させてしまい、完全に消化不良でした。
その反動から、今作は素直に自分の実体験から描いていますし、キャラクター二人も自身の主観と客観で分離、外在化させています。
――本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
モノローグの推敲に尽力しました。
ネームに入る前にモノローグの全文を書き、ネームの段階で約6割削っています。通常、漫画のモノローグはキャラクターの心情や思考を詳細に説明する為に使用されますが、今作では文学的なものを意識して書きました。それは、説明の為に使用されるモノローグが大嫌い、という事もありますし、小説に対して憧れがある、という事でもあります。ただ、漫画でやる意味を考えた際に文章を並べていくだけでは意味が無いので、映像的なイメージと交互に演出することに拘りました。
言語で立ち上がるイメージを画で見せる、ということで、それにぴったりな『桜の樹の下には(梶井基次郎)』を引用しています。
――今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
自分にとってあまりポジティブな記憶では無いので、特にありません。
ただ、秋田というキャラクターが言った「漫画なんて描いてる奴も読んでる奴もクズばっかだろ。」というセリフが描けたのは良かったです。自分が普段から口癖のように言っているセリフなので、いつか漫画で描きたいと思っていました。
作中で名前を出した漫画家の方々は大好きです。
――漫画を描く際に大切にしていることや意識していることはありますか?
「漫画を描く」という意識を持たないように意識しています。理由は二つあって、一つは、自分が普通の漫画を描いても勝ち目が無い、という打算的な理由です。もう一つは、漫画っぽくない漫画に惹かれてきた、という感情的な理由です。
また、常に昔の自分が読みたかったものを描くようにしています。それが巡り巡って他人に届くことが自分にとって漫画を描く意義であり、充足感に繋がるからです。
そして、最近の漫画は形式や表現の面でラディカル性が不足しているという言い方が出来ます。
逆説的ではありますが、AIによる創作が可能になった時代だからこそ、今一度、作家も読者も出版社も(このような情報メディアも)、漫画文化の多様性がどのように育まれてきたかを考えるべきだと思っています。
――秋山視点さんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。
最近、仕事以外の実生活を大切にしたいと思うようになりました。これは説明すると長くなってしまうので割愛しますが、漫画を描く行為は身体性を欠如させていく、という実感があります。最初の話に戻りますが、身体性を喪失して想像だけで描いてしまえば、それは失敗作になります。
これを他人に話すのは難航しそうなので、漫画にしたいと思っています。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
漫画なんて読まずに、好きな子と海へ行きましょう。

