女性でHDLコレステロールだけ高くなる原因とは?メディカルドック監修医が解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「女性でHDLコレステロールだけ高くなる原因」はご存知ですか?医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
木村 香菜(医師)
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
コレステロールとは?(悪玉LDL/善玉HDL)
コレステロールは、体内の細胞膜やホルモンの生成に必要な脂質です。ただし、その種類によって健康への影響が異なります。
善玉コレステロール(HDLコレステロール)
HDLコレステロールは、血管内の余分なコレステロールを肝臓に運び、排出を促します。また、脂質が溜まり動脈硬化を起こした血管からもコレステロールを引き抜くことができます。そのため、心血管疾患のリスクを下げる効果があります。ゆえに、「善玉」コレステロールと呼ばれることがあります。
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)
LDLコレステロールは、過剰になると血管壁に蓄積し、動脈硬化や心筋梗塞のリスクを高めます。そのため、「悪玉」コレステロールと呼ばれることがあります。
女性でHDLコレステロールだけ高くなる原因
女性は、エストロゲンというホルモンの働きによって男性よりもHDLコレステロール値が高いことが知られています。ここでは、女性特有のホルモンバランスや、他の生活習慣などがHDLコレステロールの上昇に与える影響について解説します。
エストロゲンの影響
エストロゲンはHDLコレステロールを高める作用があります。そのため、性成熟期の女性では男性よりもHDLコレステロール値が高い傾向にあります。特に、排卵期にはエストロゲンのレベルが上昇し、HDLコレステロールの値も上がることが報告されています。
閉経後は、逆にエストロゲンが低下するため、HDLコレステロール値も下がっていきます。
CETP欠損症
日本で1980年代に発見された、遺伝性の脂質代謝異常症です。
コレステリルエステル転送蛋白(CETP)が生まれつき欠損していることで、血中のHDLコレステロールが増加します。CETP欠損症については現在も研究が進められているところです。家族の方でHDLコレステロールが異常に高く、健康診断などでご自身も異常を指摘された場合には、一度内分泌内科または内科を受診すると良いでしょう。
大量飲酒
慢性的に大量にお酒を飲むと、先述したCETP蛋白活性を低下することが知られています。すると、HDLコレステロール値が高くなる場合があります。
厚生労働省からは、お酒の1日の目安として、ビールなら中瓶1本、清酒なら1合(180ml)、ワインなら一杯120ml程度としています。女性はより少ない方が良い、ともいわれています。飲酒をするのであれば、適量を守り、週に1ないし2日の休肝日を設けましょう。
特定の薬剤の影響
更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT)などで、エストロゲン製剤が用いられることがあります。このエストロゲン製剤の働きによって、HDLコレステロール値の上昇が見られる場合があります。
原発性胆汁性胆管炎
原発性胆汁性胆管炎(Primary biliary cholangitis:PBC)という病気は、病因が未だ解明されていない慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患です。中年以降の女性に多いとされています。
胆道系酵素が増えたり、抗ミトコンドリア抗体が高くなったりすることが多いです。血中のコレステロール値、特にHDLコレステロールの上昇もみられます。
無症状である場合もありますので、健康診断などで肝機能障害を指摘された場合には、消化器内科を受診しましょう。

