
妊娠できる健康な体を持つ女性が“子どもを産むための道具=侍女”となるディストピア世界を描き、エミー賞やゴールデングローブ賞を受賞したドラマシリーズ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」。その新章となる「テスタメント/誓願」の第5話が4月22日に配信された。アメリカでは高校生が卒業の時期に“プロム(舞踏会)”に参加する習慣があるが、本作の舞踏会は物語世界の異様さを浮き彫りに。その中で描かれた禁断の恋が切なさを増した。(以下、ネタバレを含みます)
■衝撃的な世界を描いた「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」から15年後が舞台
本作の原作は、「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」と同じくカナダの作家、マーガレット・アトウッド氏の小説。同氏にとって2度目となる、イギリスの権威ある文学賞・ブッカー賞を受賞した作品だ。
「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」の世界観を引き継ぎ、約15年後の全体主義国家・ギレアド共和国が舞台。抵抗組織の台頭があったものの、ギレアドは国民を強固に支配し、あまりにも冷酷な階級社会が続いていた。特に女性は信仰を盾に財産や、読み書きさえも禁じられるなど、すべての権利を奪われ、上級司令官の令嬢たちすら、その暴力の犠牲になっていた。
監視の目が張り巡らされた中、リディアおば(アン・ダウド)が支配する上級司令官の妻になるための教育を施す学校「リディアおば学院」で2人の少女が出会った。1人は、ギレアドの特権階級である司令官の娘として、体制の内側で従順かつ敬虔に育てられてきたアグネス(チェイス・インフィニティ)。もう1人は、国外からギレアドにやって来た新参者(改宗者)のデイジー(ルーシー・ハリデイ)だ。
■アグネスはギレアドの女性として大切な舞踏会の日を迎える
初潮を迎え、ギレアドの女性として結婚へと進む段階になったアグネス。ひそかに思いを募らせているギレアドの秩序を守り、警護などをする守護者であるガース(ブラッド・アレクサンダー)を見るときのドキドキと、誰が相手になるか分からない結婚への緊張に包まれる中、歯科医のグローブ(ランダル・エドワーズ)に麻酔をかけられた治療中に“不適切な行為”をされたと悟った。だが、それを表沙汰にすることは許されない。幼い頃から感情を抑え込むように育ってきたアグネスは、渦巻く負の感情を隠し、舞踏会に向けて準備する。
ギレアドの女性は思春期が一瞬だ。初潮を境に、その前は子ども、その後は誰かの妻となる。舞踏会は未来の夫に選ばれる場であると同時に、「ティーンエイジャー気分を味わえる」たった一夜の貴重な機会。「何があっても絶対楽しんでみせる」。アグネスはそんな思いで笑顔を作った。
しかし、いよいよ迎えた舞踏会の日、アグネスはあふれ出しそうな感情と向き合うことになる。

■ひそかに恋するガースとダンスをしてときめくアグネス
初めのダンスの相手は青年。ただ、若い相手と結ばれるのはまれなこと。アグネスのような良家の娘は、権力者に選ばれる。権力を持つ位置にいるということは、相応の年齢だ。その後、“本命”と予想される父親以上かもしれない年齢の相手とダンスをしていたアグネスに、思いがけないことが起きる。相手の男性が任務に呼び出され、ガースがダンスの代理に命じられたのだ。
とたんにアグネスのまなざしが熱く、潤んだものとなる。ただ、その時間はすぐに終わり、ガースは自分の仕事に戻ってしまった。
その後、ジャド司令官(チャーリー・キャリック)の面談に呼び出されたアグネスは、テレビ会議のように画面の向こうに何人もの“夫候補”がいる前で、「君の思う妻の務めとは何か」と質問される。アグネスは、おそらく練習したであろう答えを言い始めるが、言葉に詰まり、泣いてしまう。
アグネスの友人が妻であるジャド司令官は、カメラを止め、緊張しているのだろうと慰める。落ち着いたアグネスは、あらためて回答をした。
舞踏会を終え、父と一緒にガースが運転する車で帰るアグネス。そこでまた感情を揺さぶられることに。ガースが司令官となることが決まったというのだ。司令官になるということは結婚の資格を得るということ。ガースがアグネスの夫になることも可能なのだ。
■アグネスへの禁断の恋に身を焦がす少女
この舞踏会で、感情をあふれ出させたのはもう1人。アグネスと同じように適齢期となったベッカ(マッテア・コンフォルティ)だ。実はベッカはアグネスにひそかな思いを募らせていた。そのため、ダンスで男性に触られることも、見られることさえも嫌悪感を抱いた。
ダンス相手の勧めでアルコール入りの飲み物を飲み、酔ってしまったベッカ。ベッカもギレアドに生きる女性として感情を抑制していたが、介抱してくれたデイジーに「(アグネスの好きは)私の好きとは違う」と、ついこぼしてしまった。
アグネスとは親友のようでもあったベッカだが、自分によからぬことをしたグローブの娘であることから、アグネスは図らずもいつもと違う対応をしてしまった。その様子にベッカは傷ついてもいたのだ。
女性の権利がはく奪された世界で、自分の中に芽生えた感情を必死に抑えようとしながら、あらがえない思いに揺れ動くアグネスたち。ギレアドという国では大人の女性として見られる彼女たちだが、普通ならば恋を謳歌する年頃。
白髪混じりの男性たちが少女たちを“妻”にするという目で見る舞踏会の異様さ。その中で自然な恋という感情が禁断のものになってしまう切なさ。その先にあるのは希望か絶望か。そして物語は、さらに波乱を予感させる。
実はデイジーと同じギレアド国家への抵抗組織“メーデー”の一員であるガースが、ギレアドで出世するという展開。そして、女性ながら権力を手にしたリディアおばが排除されそうな展開。中盤にきて、大きく物語が動きそうだ。
「テスタメント/誓願」(全10話)は、ディズニープラスのスターにて毎週水曜に新エピソードを配信。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

