氷食症の対策と治療法

氷食症は治療した方がよいですか?
はい。氷食症は一見ただの癖のように思えますが、実際には鉄欠乏性貧血が隠れていることが多く、その原因として消化管の出血や婦人科の病気が関わっている場合があります。放っておくと貧血が進み、強い疲労感や息切れが出て、仕事や日常生活に影響が出ることもあります。氷をやめたいのにやめられない状態が続くときは、治療すべき病気がないかをチェックするためにも、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。
原因となる病気が治ると氷を食べたい気持ちも消えますか?
はい。氷食症の多くは鉄欠乏性貧血に伴って起こるため、鉄不足やその原因となる出血性の病気を治療することで改善します。鉄剤の内服や点滴で鉄を補い、必要に応じて胃や腸の出血、婦人科の病気を治療すると、数週間から数ヶ月のうちに氷への強い欲求は自然に弱まっていきます。
また、鉄欠乏とは関係なく、ストレスや心の不調がきっかけで氷をかむ行動が続くこともあります。そのような場合でも、カウンセリングや行動療法、薬物治療などによって症状が改善するケースがあります。
氷食症を自分で治すことはできますか?
氷を我慢するだけでは改善は難しく、不足している鉄をしっかり補うことが大切です。鉄には大きく分けてヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があり、ヘム鉄はレバーや赤身の肉、あさりなどの貝類、カツオやいわしなどの魚に多く含まれ、吸収率が高いのが特徴です。一方、非ヘム鉄はほうれん草や小松菜などの緑黄色野菜、大豆製品やひじきなどに含まれ、吸収率は低めですが、ビタミンCを一緒にとると吸収効率が高まります。
まずはこうした食品を意識して取り入れることが基本ですが、食事だけで十分な量を補いきれない場合には鉄のサプリメントを活用する方法もあります。ただし、氷食症の背景に治療が必要な病気が隠れていることもあるため、必ず医療機関を受診して原因を確認しましょう。
病院での氷食症の治療法を教えてください
治療はまず血液検査で鉄の状態を調べることから始まります。ヘモグロビンやフェリチン値を測定し、鉄欠乏が確認された場合には鉄剤の内服治療を行います。内服で効果が不十分な場合や胃腸に問題がある場合には、注射による鉄の補充を行うこともあります。また、消化管出血や婦人科疾患が原因とわかった場合には、その治療を並行して行う必要があります。
編集部まとめ

氷をかむ行動が長く続く氷食症は、単なる癖ではなく鉄欠乏性貧血のサインであることが少なくありません。鉄不足の背景には消化管出血や婦人科の病気などの疾患が隠れている場合や、偏った食生活による栄養不足が関わっている場合があります。
治療の基本は鉄剤による補充と、原因となる病気への対応です。普段の生活でも、レバーや赤身肉、貝類、緑黄色野菜や大豆製品など鉄を含む食品やサプリメントを取り入れることが、再発の防止に役立ちます。
氷を強く欲する状態が続くときは、氷食症を身体からの大切なメッセージとして受け止め、医療機関で原因を確認し、治療につなげましょう。
参考文献
『氷食症に関する文献的考察』(廣瀬 知二、北医療大デンタルトピックス, 2016, 47 号, p. 1-5)
『鉄代謝と鉄欠乏性貧血―最近の知見―』(日本内科学会雑誌, 2015, 104 巻, 7 号, p. 1383-1388張替 秀郎, III)

