
9月30日に放送された「プロ野球 レジェン堂」(毎週火曜夜10:00-10:55、BSフジ)。今回のゲストは、読売ジャイアンツV9時代を支えた末次利光と吉田孝司だ。MCの徳光和夫と遠藤玲子を前に、当時の緊張感あふれる練習風景や、王貞治・長嶋茂雄との貴重なエピソードの数々を語った。
■ONに続く5番打者としての重圧と快感
番組の冒頭、徳光が「ONの後の5番打者を務めた当時は緊張したでしょう?」と問うと、末次は「緊張なんてもんじゃないですよ。ONが打つと球場の歓声が鳴り止まない。その中でバッターボックスに入るんですから、虚しさもあった。」と当時の重圧を赤裸々に語った。しかし同時に「王さん、長嶋さんをランナーに置いて打った時は快感だった」とも口にし、歓声の渦に飛び込む瞬間の誇りや優越感もにじませた。
末次にとって王は1歳上の先輩で、歳も近く話しやすかったという。一方長嶋とは6歳年上ということもあって気軽にコミュニケーションをとれず、壁のようなものを感じていたそうだ。ところが吉田は長嶋より11歳年下ながらかわいがられ、「ヨシ、ちょっと走ろうか」と一緒にランニングをすることも多かったとか。
足の速い吉田が長嶋を追い越すと「ただでさえ俺は引退が近いとか言われてるんだぞ。おまえは必ず俺の2〜3歩後ろを走るんだよ」と声を掛けられたというエピソードに、スタジオは和やかな空気に包まれた。
■V9戦士たちを巨人へ導いた運命の出会い
末次が野球を始めたきっかけは、“打撃の神様”と呼ばれる川上哲治の存在だった。ともに熊本県人吉市出身で、「物心ついたときから野球の神様がいましたから。家のすぐ目の前にグラウンドがあって、そこで野球を教えてくれたのが川上さんの弟さんだった」と語る。偶然とも必然ともいえる縁が、やがて巨人でクリーンナップの一角を担う打者としての道につながった。
一方の吉田は神戸生まれで幼少期は阪神ファンだったが、小学3年生の頃から巨人キャンプを見学するように。明石市でのキャンプ地でエンディ宮本に声をかけられたことが転機となり、巨人ファンへと心変わりしたという。ルーツは違えど、少年時代から引き寄せられていたかのような巨人との縁に徳光と遠藤も驚きを隠せない。
プロ入り後、末次と吉田はともに川上監督の下でプレー。末次は川上と同郷であったが特別かわいがられることもなく、むしろ「かけ離れた存在でした」と振り返った。一方で末次の1年後輩として入団してきた堀内恒夫は、1年目から川上と平然と会話していたことに驚いたという。
番組では巨人のV9選手として、王・長嶋に関する現役時代の貴重な証言も次々と飛び出した。打撃練習で捕手を務めた吉田は、「王さんのバッティングは球をバットに乗せて運ぶようなイメージ。長嶋さんは来た球を弾いて打ち返すようなイメージ」と、至近距離で見た神技を表現。また入団直後に長嶋のティーバッティングを見た際は“ネットを突き破るほど”打球に威力があったといい、「あれほどのスピードは後にも先にも長嶋さんしかいなかった」とも語り徳光を驚かせた。
■ONの陰で輝いたV9戦士たちのリアル
今回の放送で特に印象的だったのは、長嶋の監督像を語った場面だ。明るく温和なイメージとは裏腹に「ダメな時はそのへんにあるものを蹴飛ばしてましたからね」と語られる姿は、勝負の世界を生き残ってきた男の素顔を映し出していた。長嶋は監督就任1年目で最下位に沈んだが、その翌年には見事な復活劇を果たし優勝。吉田はこの時の優勝を「現役時代一番の思い出」とまで断言している。
末次は番組の最後に「長嶋さんは打席での執念がものすごかった。長嶋さんのゲームに対する情熱はこれからも継いでいくものだと思っている」と語った。巨人黄金期をともに戦った者だからこそ伝えられる言葉に、徳光と遠藤は深く共感していた。
V9時代の巨人といえば、真っ先に王・長嶋の2人の名前が思い浮かぶ。しかしその背後には末次や吉田のように、重圧の中でも巨人軍の誇りを胸に戦い続けた選手たちがいたのだ。今回の放送は巨人黄金期を伝説から“生きた記憶”へと引き戻し、あらためて野球の奥深さと人間味を思い起こさせてくれた。

