下部消化管内視鏡検査とは?メディカルドック監修医が検査前日から当日までの流れと注意点、検査を受けたことによる合併症の可能性、検査で発見できる病気についてご紹介します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
「下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)」とは?
下部消化管内視鏡検査、通称大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は、直径が1㎝ほどの内視鏡を肛門から挿れ、大腸の中を調べる検査です。
直腸から結腸といった大腸、小腸の一部を観察し、ポリープやがん、炎症などを診断することが可能です。病変の一部を切り取って調べる生検、ポリープや早期の大腸がんを内視鏡的に切除するポリペクトミーなども行うことができます。
「下部消化管内視鏡検査」は何科で検査できる?
下部消化管内視鏡検査は、消化器内科や健康診断科などで検査できることが多いと考えられます。
健康診断の検便検査で、便潜血が陽性の結果だった場合には、精密検査を受けることが勧められます。その検査として下部消化管内視鏡検査を受ける場合、診療報酬点数は約1,500点となります。1点は10円に相当し、さらに患者さんそれぞれの保険負担割合によって費用はことなります。3割負担の方の場合には、約5,000円となり、この料金に初診料などが加わります。
人間ドックや大腸がん検診の一環として下部消化管内視鏡検査を受ける場合には、基本的には全額自己負担となります。医療機関によっても異なりますが、約20,000円が相場となります。
精密検査の場合でも、人間ドックの場合でも、ポリペクトミーなどの処置があれば、その費用も加わります。こうした処置は、保険診療の範囲になります。
下部消化管内視鏡検査と大腸内視鏡検査の違いは?
下部消化管内視鏡検査と大腸内視鏡検査の違いについて簡単に触れておきましょう。
両者はほぼ同じです。下部消化管とは主に大腸や直腸、肛門を指しますが、小腸の中部から末端である空腸や小腸も含まれる場合があります。
小腸も、胃カメラや大腸カメラで一部を観察することは可能です。しかし、小腸を全て観察することは難しかったため、現在ではカプセル内視鏡やバルーン内視鏡といった特殊な機械が開発されています。
一般的には、下部消化管内視鏡では、大腸を観察する、と考えておいて差し支えないでしょう。
下部消化管内視鏡検査の合併症
下部消化管内視鏡検査に際しては、頻度は低いものの偶発症(ぐうはつしょう)が起こることがあります。なお、偶発症とは、手術や検査の際に偶然に起こる症状などのことを指します。2019-21年までの3年間で、大腸内視鏡に関連した偶発症は0.046%でした。
穿孔
全体としては頻度が低いものの、穿孔といって大腸の壁に穴が空いてしまうことが起こりえます。治療のために手術が必要となる場合も多いです。
出血
大腸の壁を傷つけることなどによって、出血が起こってしまうこともあります。多くは内視鏡的な治療によって処置は可能と考えられます。
徐脈
大腸内視鏡検査の際、心臓の脈がゆっくりになる徐脈(じょみゃく)が起こることもあります。これは、迷走神経反射が起こることが原因として考えられ、特に鎮静剤を用いる時に起こりやすいという報告もあります。
嘔吐
大腸内視鏡検査の前には、たくさんの経口下剤を飲む必要があります。中には、飲みきれずに吐いてしまう方もいます。吐いてしまった場合でも、安静にすれば症状は改善することが多いですが、医療スタッフの指示を仰ぎましょう。
腹痛
嘔吐と同様に、大量の下剤内服などが原因となり腹痛を起こしてしまう場合もあります。もし、検査終了後に腹痛が起こった場合には、検査を受けた医療機関に相談するようにしましょう。

