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松田優作&桃井かおりの”色気”と”お洒落さ”がクセになる その世界観を愉しむ異色ドラマ「熱帯夜」は令和の今、“超熱帯夜”に

松田優作&桃井かおりの”色気”と”お洒落さ”がクセになる その世界観を愉しむ異色ドラマ「熱帯夜」は令和の今、“超熱帯夜”に

「熱帯夜」
「熱帯夜」 / (C)フジテレビ

1983年、まだバブル前の日本で放送されたドラマ「熱帯夜」。日本という国全体が勢いづきつつも、弾ける前特有の危うくて怪しい、ギラギラと煌めいた雰囲気が漂う時代。それを凝縮したような本作は、松田優作と桃井かおりがダブル主演を務め、行きずりの男と女が消費者金融強盗をあたかもゲームのように行い、罪の意識もなく逃亡する日々を描く異色作だ。今から約43年前のドラマだが、3話完結型の「熱帯夜」は、むしろ前衛的とすら思える要素に満ちている。そんな本作が”昭和の日”である4月29日(水・祝)にCSホームドラマチャンネルにて放送されることを記念して、その独特な魅力を、令和の今、平成生まれの筆者の目線で紐解いてみたい(以下、ネタバレあり)。

■「寝苦しいのよ熱帯夜 誰か 誰かあたしを眠らせて」

第1話の冒頭、タイトルバック後に「寝苦しいのよ熱帯夜 誰か 誰かあたしを眠らせて」というテロップが出てくるのだが、まさにその通りの内容だった。まるで寝苦しい夜のようにぬるっとした始まり方をし、求めていた“誰か”と出会い、夢と現の境目のような物語が繰り広げられ、衝撃的な眠り(結末)を迎える。

起承転結というより、熱帯夜の気怠いテンションがずっと続いていくような感覚は、SNSでのショート動画やYouTube、サブスクの動画配信サービスが当たり前になり、エンタメで溢れた2026年の今見ると、実に不思議な映像作品に見える。

正直、物語自体の情報量は極端に少ない…ように思う。登場人物たちの背景やその人物像はほとんど掘り下げられず、日常で燻っているものがあることは感じられつつも、強盗をゲームのように行う様からも明確な犯行の動機がないため、もはや視聴者に感情移入すら求めていないように感じる。逃亡劇の中で少しだけ彼らの内面や優しさは垣間見えるのだが、終始薄い膜で包まれているようなボヤッとした輪郭のまま突き進んでいく印象だ。

“タイパ”が声高に掲げられる今の日本のエンタメは、基本的には、どれだけ強く多く視聴者の感情を動かせるか、頭の掴みが刺激的か、伏線を緻密に張っているか、大きなどんでん返しがあるか…などのインパクトを重視し、短時間で視聴者の脳からドーパミンを出すこと、もしくは物語の説得力や重厚感に注力しているように思う。だが、「熱帯夜」は真逆。内容の整合性やストーリー自体の満足度よりも、その奇妙さが物珍しくて魅惑的で、まさに熱帯夜のようにまとわりついて離れない。

■圧倒的なオーラで捩じ伏せる…松田優作&桃井かおりの凄さ

第1話の序盤で、ラジオパーソナリティ役のおすぎとピーコが「暑いですね。夜中だって言うのに28度あるんですよ」「今はね、クーラーの普及率が55%なんです」と口にするのだが、この言葉だけでも令和との違いを強く感じさせられた。今では日本の夏はクーラーがなくては生きていけないし、熱帯夜どころか30度以上の“超熱帯夜”が当たり前になりつつあるのだ。

そんな当時の日本は今から見たら、そりゃ違うのは当たり前。今よりずっと欲望剥き出しで生きる日本人たちも、ダイヤル式の電話もブラウン管のテレビも、カラフルでハイカラなファッションもシャコタンな車も…その全部が、現実味を鈍らせる。レトロで夢の世界のようなファンシーな魅力へと変化するのだ。

そこに、視聴者を捩じ伏せるような松田と桃井の圧倒的なオーラとエロスによる力技、スター特有の存在感という“圧”が加わっているのだから最強だ。松田と桃井のレトロなお洒落さはクセになるし、その独特なハードボイルドなかっこよさとアンニュイな可愛らしさは中毒性すらあって、目が離せない。とにかくひたすらに画がおしゃれでレトロエモい。そう思うと、話の筋うんぬん以前に、2人のビジュアルに集中し過ぎてしまってストーリーが脳まで届いていないとも言える。

■ハラハラドキドキしない…大胆で斬新な嗚呼愛おしき逃亡劇

ただ本作はサスペンス逃亡劇なのに、ハラハラドキドキといった緊張感がない。というのも、強盗犯である本人たちが逃亡はしているものの、本気で隠れる気がないのだ。これがまた面白い。SNSはおろか携帯電話すら一般的に普及してない当時、彼らと刑事を繋ぐ媒介者になるのは先述したおすぎとピーコのラジオ。そして、強盗犯たちとひょんなことから出会い、行動を共にするカメラマンだった。

英二(松田)はなんだかんだそのカメラマンの同行を許す。その結果、マスコミに写真を売られて激怒するのだが、結局また許してしまうという激甘対応っぷり。そしてサチ子(桃井)もまたおすピーのラジオに手紙で投稿し、数回電話もして自身の歌まで流してもらうという、逃亡犯とは思えない大胆さを見せる。それがなんとも滑稽で愛おしい。

奇しくも”昭和の日”に放送される本作。昭和から平成を越え、令和の今だからこそ、「熱帯夜」は“超熱帯夜”へと変化した。1983年当時に見るのと、2026年の今見るのとでは、本作特有のカオスさはまた違った味わい深い“寝苦しい日の夢”となるはずだ。

構成・文=戸塚安友奈

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